海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
職場の誰にも言えない関係を抱えて、視線を合わせないように気を配ったり、帰る時間をずらしたりした経験はありませんか。
そんな行動をまるごと言い表すのが「sneak around」で、人目を忍んで動く、こっそり付き合う、という意味です。『メンタリスト』シーズン2第18話の序盤、部下二人の交際を知った新しい上司ハイタワーが、リズボンだけを部屋に残して問いただす場面に登場します。どのように使われているのか、一緒に見ていきましょう。
「sneak around」の意味とニュアンス
sneak around
意味:人目を忍んで動き回る、こっそり付き合う
sneak は、足音を立てないように体を低くして進む動作を表す語です。そこに around が加わると、一度きりの移動ではなく、そういう動き方を続けている状態に変わります。
この表現の中心にあるのは、見つかったらまずいと本人が分かっている、という点です。だから単に静かに歩くことではなく、隠す意図とセットで使われます。隠す相手は上司でも家族でも構いませんし、はっきり特定されていなくても成立します。
用途は大きく二つに分かれます。ひとつは恋愛関係で、周囲に伏せたまま会い続けることを指します。もうひとつは物理的な動きで、誰かが建物の周りをうろついている、といった不審な行動を表します。どちらの場合も後ろめたさや不信の色が残るため、褒め言葉として使われることはまずありません。
進行形で登場することが多いのも特徴です。隠し続けている期間の長さが、そのまま表現の重さになります。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは、足音を殺して動き続ける姿。一回の隠し事ではなく、隠す生活そのものを指す一言
- 恋愛にも不審者にも届く幅の広さがあるが、どちらにも後ろめたさが残るのが特徴
- 隠す相手を明示しなくても成立するので、状況をぼかしたいときに使いやすいのがコツ
『メンタリスト』S02E18のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
CBIに着任した新しい上司ハイタワーが、規則で禁じられているリグスビーとヴァンペルトの交際を正面から取り上げます。二人には異動か別れかの二択を告げ、退室させたあと、監督責任のあるリズボンだけを部屋に残しました。ここで sneak around が、部下と上司を分ける言葉として置かれます。
Hightower: Lisbon, stay a moment. Why didn’t you handle this situation yourself?
(リズボン、少し残って。どうしてこの件を自分で処理しなかったの?)Lisbon: I won’t defend what I did–
(弁解はしません——)Hightower: I understand these two sneaking around, but you’re their superior. I expect more. I’ll be writing a corrective memo.
(あの二人がこそこそ隠れてやるのは分かるわ。でもあなたは上司でしょう。もっと期待していた。是正メモを書きます)The Mentalist Season2 Episode18(Aingavite Baa)
シーン解説と心理考察
ハイタワーの一言には段差が組み込まれています。部下二人の隠れた行動は understand という語で一段低く扱い、その上でリズボンには but you’re their superior と落差をつけて詰め寄る。sneak around は、その段差の下側に置かれた言葉です。
部下の行為を「まあ理解できる」と言い切ってしまうことで、叱責の矛先が自然にリズボンへ向かう構図ができあがっています。理解を示す言葉がそのまま追い込みの道具になっている点に、この上司の手際が表れています。
リズボンが弁解を言いかけて途中で飲み込むのも、その構図に反論の余地がないと分かっているからでしょう。言い訳を始めた瞬間に、自分だけが例外だと主張する形になってしまいます。
I expect more という短い一文が最後に置かれることで、評価と失望が同時に届く場面になっています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
sneak は、床がきしまないように足を置き、息を止めて進む動作そのものです。そこに around がつくと、その姿勢のまま何か月も過ごしている絵に変わります。
ハイタワーの部屋で名指しされたのは、廊下で目を合わせない、別々に帰る、そんな細かい所作の積み重ねでした。一つひとつは小さな動作でも、続けている限り姿勢は忍び足のまま。sneak around が持つ疲労感は、この中腰の感覚から来ています。
一回きりの隠し事なら sneak out で足ります。around がついた瞬間に時間の幅が生まれる、と覚えておくと使い分けを外しません。
例文で覚える「sneak around」
隠す相手や場面によって表情が変わる表現です。恋愛、批判、弁解の三方向から見てみましょう。
They’ve been sneaking around for months, and nobody at the office noticed.
(二人は何か月もこっそり付き合っていて、社内の誰も気づかなかった)
同僚の交際が発覚したあとの雑談です。for months と組み合わせると、隠していた期間の長さがそのまま驚きの大きさになります。
If you have concerns about the budget, raise them openly instead of sneaking around.
(予算に懸念があるなら、裏で動かずに公の場で出してください)
根回しをやんわり制する場面です。職場で使うとかなり強い含みになるため、相手との距離を測ってから口にしたい一言です。
A: Why are you being so secretive?
B: I’m not sneaking around. I’m planning your birthday.
(A:なんでそんなに秘密主義なの?)
(B:こそこそなんてしてない。誕生日の準備をしてるんだよ)
隠し事を疑われて弁解するやり取りです。悪意のない隠し事にも使えることが、この返しから分かります。
あわせて覚えたい関連表現
go behind someone’s back
(人に隠れて事を運ぶ、裏切る)
裏切られる相手がはっきり存在する点が違います。sneak around は誰に対して隠しているかが曖昧なままでも成立するので、状況をぼかしたいときはこちらが向きます。
on the down low
(内密に、公にせずに)
状態を表す言い方で、動き方までは描きません。sneak around が忍び足の姿を見せるのに対し、こちらは表に出していないという事実だけを伝えます。
sneak out
(こっそり抜け出す)
同じ sneak でも、その場を離れる一回きりの動作を指します。継続して隠し続ける sneak around とは、含んでいる時間の幅が異なります。
Note|sneaked と snuck、二つの過去形
sneak around を過去形にしようとすると、英語話者のあいだでも書き方が割れます。sneaked と snuck、どちらを選ぶかで印象の変わる、少し変わった動詞です。
sneak はもともと規則動詞で、過去形は sneaked でした。ところが十九世紀後半のアメリカで snuck という形が現れ、二十世紀を通じて広がっていきます。英語の動詞は不規則形から規則形へ流れるのが一般的な方向で、時代が下るほど規則化が進みます。sneak はその流れを逆走した珍しい例で、規則動詞から後発の不規則形が生まれ、しかもそちらが優勢になりつつあるとされています。辞書の扱いも一様ではありません。かつては snuck を口語的・非標準として注記するものが多かった一方、現在はアメリカ英語の標準形として並記するものが増えました。イギリス英語では今も sneaked が優勢という指摘もあり、どちらを書くかで書き手の出自や年代がうかがえる場面があります。ただし成立の経緯には諸説があり、いつどこで最初に使われたかを断定できる資料は限られています。
劇中でハイタワーが使ったのは進行形の sneaking around でした。過去形が揺れている動詞でも、進行形なら形はひとつです。隠している最中を語ることの多いこの表現は、結果として過去形の悩みを避けて使える場面が多いことになります。
ひとつの動詞が二つの過去形を抱えたまま、今日も使われ続けています。
まとめ|ハイタワーが引いた線
sneak around は、足音を殺した動き方をそのまま名前にしたような表現でした。隠す相手が明示されていなくても成立し、続けている限り後ろめたさが残ります。
この一語があると、内緒で付き合っている、裏でこそこそ動いている、といった長い説明を一息で置き換えられます。恋愛の話にも、職場の不透明な動きにも、不審者の描写にも届く射程の広さがあります。
劇中のハイタワーは、部下の忍び足を理解できるものとして扱い、その線の外側にリズボンを立たせました。同じ行為でも、立場によって呼び名が変わる。そんな一言として、表現の引き出しに加えてみてください。


コメント