海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
別々の場所で過ごした一日の終わりに、「実は今日、自信がぐらついた」と打ち明け合ってみると、お互いに似た一日だったと分かって、話の温度が少し下がります。
その打ち明け話に使える「a crisis of confidence」を、『モダンファミリー』シーズン8第13話の後半、フィルの報告を聞いたクレアが、二人とも今日は自信が揺らぐ出来事があったようだと切り出す場面から、一緒に見ていきましょう。
「a crisis of confidence」の意味とニュアンス
a crisis of confidence
意味:自信喪失、自信が揺らぐ危機
a crisis of confidence は、自分の能力や判断に自信が持てなくなる状態や出来事を表す名詞表現です。crisis は「危機、分かれ目」、confidence は「自信、信頼」で、直訳すると「自信の危機」になります。自信がぐらついて、それまでどおりには振る舞えなくなる局面を、ひとかたまりで言い表します。
confidence には「自分への自信」のほかに「他人や組織への信頼」の意味もあるので、a crisis of confidence は、個人の自信喪失にも、組織や仕組みへの信頼が揺らぐ場面にも使えます。今回のシーンでは、個人の自信が揺らぐ意味で使われています。
動詞は have が基本の形で、have a crisis of confidence は「自信喪失に陥る」、go through a crisis of confidence は「自信が揺らぐ時期をくぐり抜ける」という広がりを持ちます。今回の台詞のように、間に little を入れると、危機の度合いが弱まり、「ちょっとした自信喪失」「ちょっと自信をなくす出来事」という軽い言い方になります。
日本語にするときは、「自信喪失」では硬く、「危機」という語を使うと大げさに響く場合があります。「自信がぐらつく」「自信をなくす出来事」と、動きや出来事の形に言い換えると、会話の温度に合わせやすくなります。
【ここがポイント!】
- 「a crisis of confidence」の核は、自信がぐらつく局面を一つの名詞でまとめる言い方
- have や go through と組み合わせ、間に little を入れると軽い言い方になる
- 「危機」と直訳せず、「自信がぐらつく」「自信をなくす出来事」と訳す
『モダンファミリー』S08E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
フィルが、ギル・ソープの予備の買い付けについてクレアに報告する場面です。クレアは喜んだあと、二人とも今日は自信が揺らぐ出来事があったと言い、料理教室の話を始めます。フレーズは、クレアの共感の一言の中に出てきます。台詞では a little crisis of confidence と、little が間に入った形です。
Phil: Gil Thorpe made a backup offer. He was just trying to scare me away.
(ギル・ソープが予備の買い付けを入れてたんだ。俺を怖がらせて追い払おうとしてただけだったんだよ。)Claire: Oh! I am so proud of you! Wow. Looks like the both of us had a little crisis of confidence today. In that cooking class
(まあ! あなたのこと、本当に誇りに思うわ! すごいわね。私たち二人とも、今日はちょっと自信をなくす出来事があったみたいね。あの料理教室で)Phil: Yes?
(うん?)Claire: Yes, well, Chef Dumont had the audacity to tell me that I can’t cook.
(ええ、それがね、シェフ・デュモンったら厚かましくも、私は料理ができないって言ってきたのよ。)Modern Family Season8 Episode13 (Do It Yourself)
シーン解説と心理考察
クレアの Looks like the both of us had a little crisis of confidence today. は、相手の話を受けて、自分の側の出来事を並べる共感の一言です。the both of us は「私たち二人とも」で、フィルとクレアを同じ側に置く言い方です。フィルの側にあたるのは、ギル・ソープに怖がらされて追い払われそうになった件で、クレアの側にあたるのが、この後に続く料理教室の件です。
Looks like は「〜みたいね」と、断定を避けて状況をまとめる言い出しです。今日という一日の中で、お互いに揺れる出来事があったと、軽く確認するような響きを持っています。a little が付くことで、深刻な告白ではなく、夫婦の間で肩の力を抜いて話せる程度の打ち明け話になっています。
クレアの言葉は In that cooking class のところで途中で区切られ、フィルが Yes? と、先を促すように返します。それを受けて、クレアが Yes, well, と話を続けます。well を挟んで間を取る話し方は、続きを話し始めるときの、ひと呼吸にあたります。
Chef Dumont had the audacity to tell me that I can’t cook. の audacity は「厚かましさ」を表す名詞で、had the audacity to … で「厚かましくも〜した」と、相手の行動を非難する言い方になります。クレアは、料理教室で受けた一言を、そのまま自分の自信が揺らいだ原因として語っています。
フィルの報告に喜んだ直後に、自分の側の出来事を差し出す流れから、二人が互いの揺らぎを共有する距離にいることが伝わってきます。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
足元の床が、ほんの少しぐらりと揺れる感覚が、このフレーズの絵です。倒れるほどではありませんが、一瞬、立っている場所への信頼がぐらつきます。その「ぐらり」が、crisis of confidence の絵です。
a little が付くと「少しぐらついた」、外すと「大きく揺れて立っていられない」と、揺れ幅の違いで区別できます。クレアが選んだのは、少しだけ揺れた、という小さな揺れの言い方でした。
自分が少し揺れた日のことを一つ思い出して、その日を a little crisis of confidence と呼んでみると、フレーズが手元に残ります。
例文で覚える「a crisis of confidence」
a crisis of confidence は、失敗のあとや新しい挑戦の前など、気持ちが揺れる場面で使えます。have の形と little の有無に注目して、3つの例文を見ていきましょう。
After the failed presentation, he had a crisis of confidence.
(プレゼンに失敗したあと、彼は自信を失ってしまいました。)
仕事の失敗を振り返るビジネスの場面です。had のあとに a crisis of confidence を置く基本の形で、失敗が引き金になったことが after で示されています。
I’m having a little crisis of confidence about this new job.
(この新しい仕事について、ちょっと自信がなくなってきています。)
新しい仕事への不安を打ち明ける日常の場面です。a little が入り、having と進行形になると、今まさに揺れている最中という意味になります。
A: You seem down today.
B: Yeah, I had a crisis of confidence at the audition.
(A:今日は元気がないね。)
(B:うん、オーディションで自信をなくしちゃって。)
友人に落ち込みを話す、往復の会話です。at the audition と場所を添えると、どの場面で自信が揺らいだのかが分かります。
あわせて覚えたい関連表現
lose confidence
(自信をなくす)
lose confidence は、自信をなくすという動作を表す動詞表現です。a crisis of confidence は、その状態が危機的に表れた局面を、名詞でひとまとめに言う形です。
self-doubt
(自己不信、自分への疑い)
self-doubt は、自分を疑う内面の気持ちそのものを指します。a crisis of confidence は、その気持ちが表に出て、状況に影響する局面を指します。
lose one’s nerve
(おじけづく、気後れする)
lose one’s nerve は、いざというときに勇気がなくなる場面で使います。a crisis of confidence は、勇気よりも、自分の能力や判断への信頼が揺らぐことが中心です。
Note|little が付くと、揺れ幅が変わる。a crisis of confidence の訳し分け
a crisis of confidence は、little の有無と、日本語の選び方で印象が変わります。今回の台詞を手がかりに、訳し分けを整理します。
台詞は a little crisis of confidence です。little は「小さな」で、危機の大きさを下げています。日本語にすると、「ちょっと自信をなくす出来事」「少し自信がぐらついたこと」と、「ちょっと」「少し」を足す形になります。クレアの台詞の「私たち二人とも、今日はちょっと自信をなくす出来事があったみたいね」という訳にも、この little の軽さが映っています。
little を外した a crisis of confidence は、揺れ幅が大きくなります。「自信喪失」「自信が根こそぎ揺らぐ状態」と訳すと、プレゼンの大失敗のあとや、長く続く不調のような、重い場面に合います。同じ英語表現でも、日本語は軽い訳と重い訳の2つの選択肢を持つことになります。
訳語を決めるときは、動詞の形も合わせます。have a crisis of confidence は「自信をなくす」、go through は「自信が揺らぐ時期を過ごす」と、動詞によって日本語の時間の幅が変わります。「自信喪失」という名詞の訳は、文章では収まりがよい一方、会話では「自信をなくす」のように動詞で言ったほうが自然に聞こえます。
訳す前に、場面の重さを一度測っておくと、日本語の選び方が定まります。
まとめ|ちょっとした揺らぎを、分かち合う言葉
a crisis of confidence は、自信が揺らぐ局面を、一つの名詞でまとめて言い表す表現です。have や go through と組み合わせ、間に little を入れると、軽い言い方になります。
失敗のあとの落ち込み、新しい挑戦の前の不安、友人への打ち明け話など、気持ちが揺れた出来事を伝える場面で使えます。訳すときは「危機」と直訳せず、「自信がぐらつく」「自信をなくす出来事」と言い換えると、会話になじみます。
「ちょっと」の一語が付くだけで、重たい危機が日常の小さな揺らぎに変わります。


コメント