海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
思いがけないトラブルが起きたとき、これは誰のせいでもないと伝えて、相手の気持ちを軽くしたくなる場面はありませんか。
そんなときに使える「an act of God」を、『モダンファミリー』シーズン5第24話の前半、火事が起きた結婚式の日に、ジェイが息子のミッチェルへかける言葉から、一緒に見ていきましょう。
「an act of God」の意味とニュアンス
an act of God
意味:天災、不可抗力(人の力では避けられない出来事)
an act of God は、直訳すると「神の行い」ですが、宗教的な主張をする言い方ではありません。地震・嵐・洪水のように、人の過失や意図によらずに起こる自然の出来事を指し、そこに「誰のせいでもない」という含みが加わります。契約や保険の文章に現れる不可抗力という語義でもあり、責任の所在を問えない出来事を言い表す表現です。
使い方の型は単純で、It was an act of God. のように主語と be 動詞で言い切る形が基本です。原因を示したいときは、caused by an act of God のように by を使い、天災が原因で起きたことを説明します。名詞句の頭には冠詞の an が付くので、a ではなく an と覚えておくと、書くときも話すときも迷いません。
自分や誰かの失敗を責める流れになりかけたときに、「それは人の手に負えない出来事だった」と切り分けるために使います。責任を軽くしたい気持ちを込めて、相手をかばう言い方としても使えるのが特徴です。
【ここがポイント!】
- 核は、人の責任ではなく、避けようのなかった出来事という感覚
- 直訳の「神の行い」ではなく、天災や不可抗力と訳すと意味がつかみやすい表現
- It was an act of God. のように言い切って、誰のせいでもないと伝えるのがコツ
『モダンファミリー』S05E24のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
結婚式の日に火事が起き、式の予定が崩れたなかで、ジェイがミッチェルに、これはお前のせいではないと声をかけます。続けて火事は an act of God だと言い切りますが、その直後に言い直しを重ねていくのが、このシーンの見せ場です。ミッチェルが最後に返した一言にも注目です。
Jay: This is not your fault, by the way.
(ちなみに、これはお前のせいじゃないぞ。)Jay: The fire was an act of God.
(あの火事は天災だ。)Jay: Not that god sent a fireball down to keep a couple guys from getting married, but I didn’t say that right.
(神様が、ふたりの男が結婚するのを止めようと火の玉を落としたって意味じゃないぞ。いや、言い方が悪かったな。)Jay: There’s no way that this any of this is part of God’s plan.
(こんなことが、神の計画の一部なんてわけがない。)Mitchell: Save something for the toast, Dad.
(乾杯の挨拶に取っておいてよ、父さん。)Modern Family Season5 Episode24 (The Wedding (Part 2))
シーン解説と心理考察
「これはお前のせいじゃない」という最初の一言は、火事の責任を息子が背負い込まないようにするための気遣いから出たものです。続く「あの火事は天災だ」は、その気遣いを具体的な言葉に置き換えたものと言えます。誰かの責任を問うのではなく、避けられなかった出来事として片づけることで、相手の肩の荷を下ろそうとしています。短い言葉を重ねて伝える形なので、聞き手にとっては、誰のせいでもないというメッセージが最初にはっきり届く構成です。
ところがジェイは、自分の言葉が別の意味に受け取られかねないと考えたのか、「神様が火の玉を落としたって意味じゃない」「言い方が悪かったな」と、その場で言い直しを重ねます。さらに「神の計画の一部なんてわけがない」とまで続けます。ジェイ本人がそう語っている、という事実が示すのは、an act of God が持つ字面の印象を、話し手自身が気にしていることです。
それに対するミッチェルの返しが、「乾杯の挨拶に取っておいてよ、父さん」です。ジェイの言葉を受けて、その続きは乾杯の場で、と切り返しています。言い直しの多いジェイの話しぶりと、短く受け止めるミッチェルの一言の対比が、この会話の温度を決めています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
嵐や地震のように、誰かが起こしたのではなく、空の上から降ってきたような出来事を思い浮かべてみましょう。人ではなく、もっと大きな力の行い(act)だから、人の責任にはならない。この筋道が、an act of God の意味にそのままつながります。
ジェイのシーンでは、火事という予想外の出来事に対して、誰のせいでもないと伝える一言がこの表現でした。ところが本人が言い直しを重ねたことで、直訳の「神の行い」が持つ響きも印象に残ります。言い直しの場面ごと思い出せば、直訳の響きと辞書上の意味の両方を、セットで覚えておけます。
例文で覚える「an act of God」
an act of God は、悪天候や災害で予定が崩れたときに、不可抗力だったと説明する場面で登場します。3つの例文で使い方を確認していきましょう。
The flight was canceled because of an act of God, so we couldn’t do anything about it.
(フライトは天災で欠航になったので、私たちにはどうしようもなかった)
悪天候による予定変更を説明する日常の場面です。because of の後ろに置くと、欠航の理由が人の責任ではないことが伝わります。
The contract says we are not responsible for delays caused by an act of God.
(契約書には、天災による遅れについては当社は責任を負わないと書かれている)
契約書の免責条項を説明するビジネスの場面です。caused by an act of God の形で、遅れの原因を示しています。
A: Was it your mistake?
B: No, it was an act of God. The storm knocked out the power.
(A:君のミスだったの?)
(B:いや、天災だよ。嵐で停電したんだ)
自分に非がないことを友人に伝える、カジュアルな会話です。It was an act of God. と言い切ったあとに、嵐で停電した、という具体的な理由を添えて説得力を出しています。
あわせて覚えたい関連表現
force majeure
(不可抗力)
force majeure は契約書などで使う法律・ビジネス寄りの用語で、an act of God より広く、自然災害以外の事情も含めて使われます。an act of God は自然災害に寄った、日常でも出てくる言い方という違いがあります。
natural disaster
(自然災害)
natural disaster は出来事そのものの種類を指す言い方です。an act of God は、その出来事を「人の責任ではない」ものとして捉え直す言い方という違いがあります。
beyond one’s control
((人の)手に負えない、どうにもならない)
beyond one’s control は原因を問わず、どうにもできない状況全般に使えます。an act of God は自然の力による出来事を指す点で、対象の広さが違います。
Note|「神の行い」と直訳すると伝わり方がずれる理由
an act of God をそのまま日本語にすると「神の行い」となり、まるで神が意図して起こした出来事のように聞こえます。今回のシーンのジェイは、この直訳の響きが気になったのか、直後に「神様が火の玉を落として、ふたりの男が結婚するのを止めようとした、という意味じゃない」と言い直しています。
辞書に載っている意味は、人の責任にはできない天災・不可抗力です。語の構成は「act(行い)」と「God(神)」ですが、表しているのは神の意志ではなく、人の力では避けられなかったという事実のほうです。だから訳すときは、直訳を避けて「天災」や「不可抗力」とするだけで、伝えたい意味がまっすぐ届きます。
反対に、聞き手が直訳のほうを思い浮かべてしまう可能性があるとき、ジェイのように「そういう意味じゃないけど」と補足を足す話し方もあります。フレーズの意味と、字面の響きは別物だと意識しておくと、シーンのやり取りも読み取りやすくなります。
直訳と辞書上の意味のずれを知っておくと、an act of God の一言が持つ響きまで味わえます。
まとめ|言い直しの多いジェイの一言から学ぶこと
an act of God は、人の責任ではない天災や不可抗力を指す表現です。直訳の「神の行い」ではなく、誰のせいでもない出来事、と受け取るのが基本になります。
悪天候で予定が崩れたときや、責任を問えない出来事を説明したいときに、It was an act of God. と言い切る形で使えます。契約書のような文章でも、日常の会話でも、意味の軸は変わりません。
ジェイが言い直しを重ねながら息子に伝えようとしたのは、誰のせいでもない、というひとつの気持ちでした。責任を切り分けたいときの表現として、引き出しに加えてみてください。


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