海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
気になる相手を誘いたいのに、あと一歩が出ない。そんなためらいを乗り越えた瞬間は、人生のあちこちにあります。
そんな瞬間を言い表せる「get one’s nerve up」を、『モダンファミリー』シーズン8第9話の後半、ジェイが昔の思い出を語るなかで口にする一言から、一緒に見ていきましょう。
「get one’s nerve up」の意味とニュアンス
get one’s nerve up
意味:勇気を出す、思い切って気持ちを奮い立たせる
get one’s nerve up は、怖さや恥ずかしさでためらっていた人が、気持ちを奮い立たせて、行動に踏み出す直前の心の動きを表す表現です。告白や頼みごと、人前での発言、謝罪など、気が重い行動の前に、自分を励ますときに使えます。
nerve は、ここでは「神経」ではなく「度胸」「勇気」の意味です。get 〜 up は「〜を上げる」なので、「度胸を持ち上げる」、つまり「勇気を出す」となります。one’s は、主語に合わせて my、your、his、her などに変わります。作中では、過去の話なので get が got に、主語が I なので one’s が my に変わり、got my nerve up の形になっています。
何をする勇気なのかは、to 不定詞で続けます。作中の got my nerve up to ask her は、「彼女を誘う勇気を出した」という意味です。作中には Finally も付いていて、「やっと」という響きが加わります。ためらいが長く続いたあとで、ようやく決心がついた、という流れが伝わります。
時制を変えれば、これから勇気を出すときにも使えます。I need to get my nerve up. なら「勇気を出さないと」、I’m trying to get my nerve up. なら「勇気を出そうとしているところ」です。got のままなら、すでに踏み出した過去の話になります。出したあとなのか、出す前なのかを、get の形で言い分けられる点が、この表現の使いやすいところです。
【ここがポイント!】
- 「get one’s nerve up」の核は、ためらいを越えて、行動に踏み出す気持ちを奮い立たせること
- nerve は「神経」ではなく「度胸・勇気」で、何をする勇気かは to 不定詞で続ける
- one’s は主語に合わせて my / your / her などに変わる
『モダンファミリー』S08E09のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
フィルが自分の過去の様子を一言口にすると、ジェイが、昔夢中だったマーシャ・ゴールディングの話を始めます。勇気を出して誘ったときの緊張を語ると、フィルが冗談めかした一言を返します。
Phil: I was slamming Mountain Dews like a wild man.
(俺は、狂ったみたいにマウンテンデューをがぶ飲みしてたよ。)Jay: Marsha Goulding. I had this huge crush on her. Finally got my nerve up to ask her to the Spring Fling. First dance, I was terrified. I’m tromping all over her feet. But as the dances went on, it got easier, and right in the middle of Sam Cooke singing “You Send Me,” I went for it. I was just so surprised she kissed me back.
(マーシャ・ゴールディング。彼女にすごく夢中だったんだ。やっと勇気を出して、スプリング・フリングに誘った。最初のダンスは怖くてしかたなかった。彼女の足をさんざん踏みつけてたよ。だが、ダンスが進むにつれて楽になってきて、サム・クックが「You Send Me」を歌ってる真っ最中に、思い切って行動に出たんだ。彼女がキスを返してくれたのが、ただただ意外だった。)Phil: Well, you can’t have your first kiss again, but you can have your next one right in there.
(まあ、初めてのキスはやり直せないけど、次のキスなら、すぐそこでできるじゃないか。)Modern Family Season8 Episode9 (Snow Ball)
シーン解説と心理考察
フィルの I was slamming Mountain Dews like a wild man. は、自分の昔の様子を振り返る一言で、slam は「がぶ飲みする」という口語です。
ジェイの語りは、Marsha Goulding. と名前を一言置くところから始まります。続く I had this huge crush on her. の crush は、相手に抱く強い恋心のことで、have a crush on 〜 で「〜に夢中になる」という意味です。前置きなしに名前から入る話し方が、思い出が目の前によみがえっている様子を感じさせます。
フレーズが出てくるのは、その次の文です。Finally got my nerve up to ask her to the Spring Fling. では、Finally が、ためらった時間の長さを物語ります。ask her to the Spring Fling は、「彼女をスプリング・フリングに誘う」という形で、ask 〜 to … が「〜を…に誘う」を表します。
First dance, I was terrified. と、最初のダンスの怖さを語り、I’m tromping all over her feet. と続けます。過去の話なのに現在形になっているのは、出来事を目の前で起きているように語る言い方で、足を踏みつけていた場面が生々しく伝わります。tromp all over 〜 は「〜を踏みつけ回る」という意味です。
But as the dances went on, it got easier は、「ダンスが進むにつれて楽になった」という意味です。そのあとの I went for it は、「思い切って行動に出た」という言い方で、ここでもためらいを越えて踏み出した瞬間が語られています。誘う前の決心が got my nerve up、ダンスの途中で踏み出した瞬間が went for it、と、勇気を出す場面がこの語りの中に二度出てきます。最後の I was just so surprised は、思いがけない結果に素直に驚いた、という一言です。短い文を重ねていく語り口のなかに、当時の緊張と照れが残っています。
フィルの Well, you can’t have your first kiss again, but you can have your next one right in there. は、ジェイの話を受けた返しです。can’t have 〜 again は「〜をやり直せない」、but でつないで、次のキスならできると話を前向きにつなぎます。
勇気を出す前の緊張と、出したあとの驚き。その間をつなぐ一言として、got my nerve up が語りの真ん中に置かれています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
車を持ち上げるジャッキを、度胸に当てはめます。縮こまっていた度胸を、ジャッキで少しずつ持ち上げていく。nerve が「度胸」、up が「上へ」、get が「〜の状態にする」なので、「度胸を上の状態にする」と、字面のまま「勇気を出す」になります。
持ち上がりきった瞬間に、ためらっていた一言が口から出ます。その一言の中身を、to のあとに置くと覚えておきましょう。to ask her なら「誘う」、to call her なら「電話する」と、行動が to のあとに入ります。
ジェイの got my nerve up to ask her を、このジャッキに重ねてみます。持ち上がった度胸が、「誘う」という行動へ向かっていく一文です。ジャッキが上がりきった状態を言うのが got my nerve up、上がる途中を言うのが trying to get my nerve up、と、時制や形を変えて、ジャッキの動きの段階を言い分けることもできます。
例文で覚える「get one’s nerve up」
気が重い行動の前に使う表現です。仕事、連絡、日常の場面での形を確認していきましょう。
I finally got my nerve up and asked my boss for a day off.
(やっと勇気を出して、上司に休みをお願いした。)
言い出しにくい頼みごとをした場面です。finally が、ためらった末の決心という響きを足しています。and でつないで、勇気を出したあとの行動を続けています。
It took me a week to get my nerve up to call her.
(彼女に電話する勇気を出すのに1週間かかった。)
連絡をためらっていた場面です。「〜するのに(時間)かかった」という It took me … to の形に、get my nerve up to call her をはめ込んでいます。
A: Did you talk to him?
B: Not yet. I’m still trying to get my nerve up.
(A:彼とは話した?)
(B:まだ。まだ勇気を出そうとしているところ。)
話しかけるのをためらっている友人との会話です。try to で「出そうとしている途中」を表し、まだ出せていない状態を示しています。
あわせて覚えたい関連表現
work up the nerve
(少しずつ勇気をためる)
work up the nerve は、時間をかけて勇気を作っていく過程に重点があります。get one’s nerve up は、「勇気を出した」という到達点に重点があります。
pluck up one’s courage
(勇気を奮い起こす)
pluck up one’s courage は、nerve の代わりに courage を使う形です。one’s は get one’s nerve up と同じく、主語に合わせて変わります。
build up the courage
(勇気をつける)
build up the courage は、時間をかけて勇気を積み上げる意味合いが強い言い方です。get one’s nerve up は、踏み出す瞬間の決心を言いやすい表現です。
Note|nerve は「神経」ではなく「度胸」。get one’s nerve up と get up the nerve の語順
nerve には、体の「神経」という意味があります。ただ、get one’s nerve up では、「度胸」「勇気」の意味です。「神経を上げる」と訳すと意味が通らなくなるので、「勇気を出す」と訳します。have the nerve to 〜 のように、nerve が「度胸」の意味で使われる形はほかにもあります。
この表現には、nerve の位置が違う形が2つあります。ひとつは作中の get one’s nerve up で、nerve が one’s の直後に置かれ、up が最後に来ます。もうひとつは get up the nerve to 〜 で、up の直後に the nerve を置き、to 不定詞をすぐ後ろに続けます。意味はどちらも「〜する勇気を出す」で、変わりません。
たとえば、She got her nerve up to speak. と She got up the nerve to speak. は、同じ意味です。前者は「her nerve」が up の前に入り、後者は「the nerve」が up の後ろに入ります。どちらの形でも、何をする勇気かは to 不定詞で表します。
ジェイの一文は前者の形で、to ask her が up の後ろに続いています。
まとめ|ためらいを越える前の、気持ちの持ち上げ方
get one’s nerve up は、ためらいを越えて、行動に踏み出す気持ちを奮い立たせることを表す表現です。nerve は「度胸」で、何をする勇気かは to 不定詞で続けます。
告白や頼みごと、人前での発言など、気が重い行動の前に使えます。時間をかけて勇気をためる work up the nerve と並べておくと、「出した」という到達点と、「ためていく」という過程を言い分けられます。
昔夢中だった相手を誘ったときのことを、短い文を重ねて語るジェイ。その語りの中の got my nerve up を、次に勇気を出す場面で思い出してみるのもよさそうです。


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