海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
大切な誰かが、明らかに勝ち目のない相手に単身で挑もうとしている場面に出くわす瞬間が、ドラマにはよくあります。
そんな緊迫した瞬間にぴったりの「take on」を、『ホワイトカラー』シーズン3第4話の序盤、無謀な救出計画に走ろうとするモジーをニールが慌てて呼び止めるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「take on」の意味とニュアンス
take on
意味:(強敵・困難な相手に)立ち向かう、対抗する
take on は本来「仕事や責任を引き受ける」という意味の句動詞ですが、対象が人間、特に自分より格上・危険な相手である場合は「その相手に挑む、対抗する」という意味に変わります。自ら進んで挑む場面にも、無謀を承知で挑まざるを得ない場面にも使われる、対象への構えの強さを示す表現です。
You can’t take on the champion. のように使うと「その相手に挑むなんて無理だ」という制止のニュアンスになり、Our small startup decided to take on the industry giant. のように使うと、格上の存在にあえて挑戦する意志を表します。文脈によって無謀さへの警告にも、勇敢さの表明にもなる、振れ幅の大きい表現です。
【ここがポイント!】
- 「take on」の核は、自分より格上・危険な相手に正面から挑むイメージ
- 仕事の依頼を引き受ける意味にもなる、対象によって表情を変える表現
- can’t take on の形なら「挑むのは無理だ」という制止の合図として使える
『ホワイトカラー』S03E04のシーンで見てみよう
意味を確認したところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
恩人の窮地を知ったモジーが、危険な人物デ・ルーカに単独で立ち向かおうとします。その無謀さに気づいたニールが血相を変えて呼び止め、事情を聞き出そうとする場面です。
Neal: Moz! Are you actively trying to die? You can’t take on de Luca.
(モズ! 本気で死にたいのか? デ・ルーカに立ち向かうなんて無理だ。)Mozzie: Neal, I’m on a rescue mission! Mr. Jeffries is in trouble.
(ニール、これは救出作戦なんだ! ジェフリーズさんが危ないんだぞ。)Neal: Let’s keep talking this through. How did de Luca find you?
(落ち着いて話そう。デ・ルーカはどうやって君を見つけたんだ?)Mozzie: Well, he knew I was connected to the group home. He must have tracked my donation.
(そうだな、僕が児童養護施設と繋がりがあると知っていたんだ。寄付を辿られたに違いない。)White Collar Season3 Episode4 (The Dentist of Detroit)
シーン解説と心理考察
「Moz!」という短い呼びかけに、ニールの動揺がそのまま滲み出ています。「Are you actively trying to die?(本気で死にたいのか?)」という強い言葉には、軽口の応酬が多い2人にしては珍しく、本気の心配が表れています。
一方のモジーは「I’m on a rescue mission!(これは救出作戦なんだ)」と一歩も引きません。普段は用心深く、危険を徹底して避けるモジーが、恩人であるジェフリーズ氏のためなら自らの安全を後回しにする様子が描かれています。ニールが頭ごなしに止めるのではなく「Let’s keep talking this through(落ち着いて話そう)」と冷静に事情を聞き出そうとする姿勢には、長年の付き合いで培われた信頼関係と、ニールの危機管理の巧みさがにじんでいます。普段は軽口を叩き合う2人が、危険が絡んだ途端に一方が本気で止め、一方が意固地に食い下がるという役割分担に切り替わる呼吸も、この場面ならではの見どころです。
『ホワイトカラー』流・覚え方のコツ
take on を覚えるコツは、自分の肩の上に(on)、重い荷物を自ら持ち上げて乗せる(take)イメージです。仕事でも敵でも、対象の重さをまるごと引き受ける感覚が、このフレーズの核になっています。
モジーはまさに、自分の体格には不釣り合いなほど大きな危険を、恩人のために自ら背負い込もうとしていました。荷物の重さと、それに挑む覚悟を天秤にかけるイメージを持っておくと、仕事でも対人関係でも take on していいものかどうかを判断する場面で自然に浮かんでくる表現になります。背負おうとしている荷物が自分の体格に見合っているかどうかを、一度立ち止まって確かめる感覚も、このフレーズと一緒に覚えておきたいポイントです。
例文で覚える「take on」
格上の相手に挑む場面から、仕事を引き受ける場面まで、take on を3つの例文で確認していきましょう。
You can’t take on the champion without proper training.
(きちんとした練習なしにチャンピオンに挑むことはできない)
格上の相手への挑戦を止めようとする場面です。記事内のシーンと同じ、無謀な挑戦を制止する使い方です。
Our small startup decided to take on the industry giant.
(私たちの小さなスタートアップは、業界大手に挑むことを決めた)
企業が大きな競合相手に挑戦する場面です。弱者が強者に挑む構図でよく使われます。
A: Are you sure you want to take on this project alone?
B: I know it’s a lot, but I want to try.
(A:本当に一人でこのプロジェクトを引き受けるつもりなの?)
(B:大変なのはわかってる。でも挑戦してみたいんだ)
大きな責任を一人で引き受けようとする相手を気遣う会話です。take on が「仕事を引き受ける」という意味で使われる例でもあります。
あわせて覚えたい関連表現
stand up to
(屈せずに立ち向かう)
take on が挑む行動そのものを指すのに対し、stand up to は相手に屈服せず立ち向かう姿勢を強調する表現です。
go up against
(〜と対決する)
take on とほぼ同義ですが、go up against は対戦相手や競合をより客観的に述べる場面で使われやすい言い回しです。
face off against
(〜と正面から対決する)
スポーツや競技の文脈で使われることが多く、直接対峙するニュアンスがより強く出る表現です。
Note|弱者が強者に挑む物語を好む、アンダードッグ文化とtake on
take on the underdog のように、弱い立場の者が強者に挑む場面を表すとき、この表現はアメリカのスポーツ実況やニュース記事に頻繁に登場します。
アメリカには古くから「アンダードッグ(underdog)」、つまり格下と見なされた挑戦者を応援する文化的な傾向があります。ボクシングの世界タイトル戦や大学スポーツの番狂わせ、あるいは中小企業が業界最大手に挑む経済ニュースなど、弱者が強者に立ち向かう構図が語られる場面では決まって take on が使われます。スポーツ実況では The underdog team will take on the defending champions this weekend. のような形で頻出し、単なる対戦相手の紹介以上に、格の差をあえて強調して挑戦の物語性を高める役割を果たしています。判官びいきという感覚は日本語にも通じるものですが、英語圏ではそれがスポーツ実況や見出しの定型表現として、より直接的に言語化されている点が特徴的です。
モジーがデ・ルーカという明らかな強敵に挑もうとした場面も、まさにこのアンダードッグの構図そのものでした。take on という一語には、勝算よりも意志を優先する挑戦者の姿勢が込められています。
格差を恐れない挑戦の合図として、覚えておきたい表現です。
まとめ|モジーの無謀さから見る、take onの覚悟
take on は、自分より格上・危険な相手にあえて挑む姿勢を表す表現です。
仕事でも対人関係でも、明らかに分が悪い相手に挑むかどうかを語るとき、この一語が状況の緊張感をそのまま伝えてくれます。
恩人のために危険を顧みず突き進もうとするモジーの姿には、勝算よりも信念を優先する強さが表れていると言えます。次に立ち向かう対象の大きさを語りたい場面では、この表現を会話のレパートリーに加えてみてください。


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