海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
手元で見守ってきた存在を、いよいよ送り出す時が来た。そんな気持ちになったことはありませんか。
そんな場面で聞こえてくる「spread one’s wings」を、『モダンファミリー』シーズン7第11話の後半の終わり近く、家族に理由を尋ねられたフィルが、アヒルたちを手放す気持ちを語る場面から、一緒に見ていきましょう。
「spread one’s wings」の意味とニュアンス
spread one’s wings
意味:自立して羽を広げる、自分の力を試して新しい世界へ飛び出す
spread one’s wings は、守られていた場所を離れて、自分の力で新しいことに挑戦し始める様子を表す表現です。spread は「広げる」、wings は「翼」で、文字どおりには「翼を広げる」という意味です。鳥が巣立つときに、翼をぐっと広げて空へ向かう姿を、人の自立にたとえています。
one’s の部分には、主語に合わせた所有格が入ります。She spread her wings. なら her、I want to spread my wings. なら my、といった具合です。今回のシーンでは、let them spread their wings と、主語にあたる them に合わせて their になっています。見出しの spread one’s wings の one’s が、their に置き換わった形です。
使い方の型も押さえておきましょう。今回のシーンのように let + 人 + spread their wings と置くと、「~が羽を広げるのを許す、やらせてやる」という意味になります。let のあとの動詞は原形です。このほか、spread my wings や spread her wings のように、本人が主語になる形で、「自分の力を試す」と言うときにも使います。
この表現が描くのは、巣立つ瞬間までの動作です。「広げる」という動作に焦点があり、前向きな挑戦の響きがあります。親元を離れる、新しい仕事や環境に挑む、といった場面に合います。
【ここがポイント!】
- 「spread one’s wings」の核は、巣立つ鳥が翼を広げて、自分の力で飛び出すイメージ
- one’s は主語に合わせて my・her・their などに変わり、let + 人 + 原形の形でも使える
- 「広げる」動作に焦点があり、親元から離れて挑戦し始める前向きな響きがある
『モダンファミリー』S07E11のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
アヒルたちを手放そうとするフィルに、ルーク、クレア、ヘイリーが次々と声をかける場面です。理由を尋ねられたフィルは、ネットの情報を挙げて「もう準備ができていた」と答えます。最後にヘイリーから「朝は肩をもんであげていたのに、何があったの?」と聞かれ、その答えの中に今回のフレーズが登場します。
Luke: Dad, what are you doing?
(父さん、何してるの?)Phil: It is time for them to go.
(あの子たちが旅立つ時が来たんだ。)Claire: But, honey, are you sure they can even fly?
(でも、あなた、あの子たちが本当に飛べるって確かなの?)Phil: According to the Internet, they were ready a month ago.
(ネットによれば、1カ月前にはもう準備ができてたんだ。)Haley: At breakfast, you were giving them shoulder rubs. What happened?
(朝ごはんのときは、肩をもんであげてたじゃない。何があったの?)Phil: I realized today that I may have been holding them back because that was fun for me. But in the end, you got to let them spread their wings, right?
(今日気づいたんだ。ひょっとして俺があの子たちを引き止めてたのは、俺が楽しかったからじゃないかって。でも結局のところ、羽ばたかせてやらなきゃいけないだろ?)Modern Family Season7 Episode11 (Spread Your Wings)
シーン解説と心理考察
ルークの Dad, what are you doing? は、父に向けた率直な問いです。答えるフィルの It is time for them to go. は、「~する時が来た」という It is time for ~ to ~ の型で、旅立ちの時期が来たことを短く告げています。
クレアの But, honey, are you sure they can even fly? は、but で相手の言葉に待ったをかけ、「本当に飛べるのか」という具体的な確認を投げかけます。フィルはそれに According to the Internet と根拠を示し、they were ready a month ago と答えます。a month ago という数字つきの言い方で、準備の時期をはっきり挙げているのが特徴です。
ヘイリーの At breakfast, you were giving them shoulder rubs. What happened? は、朝のようすを具体的に挙げたうえで、急な変化の理由を尋ねています。過去進行形の were giving が、朝の時点ではまだ肩をもむ動作が続いていたことを示しています。
フィルの締めの返答は、I realized today と、今日の気づきを切り出す形で始まります。that I may have been holding them back because that was fun for me では、may have been と完了進行形を重ね、「引き止めていたのかもしれない」と、自分の行動を振り返る言い方になっています。because that was fun for me と、その理由を「自分が楽しかったから」と述べている点が、この発言の中心です。
そのうえで But in the end, you got to let them spread their wings, right? と続きます。right? を最後に添えて、自分の結論を、聞いている家族に確かめる形で閉じています。送り出す理由を、相手のためだけではなく、自分の気持ちの整理としても語っている点に、この一言の重みが表れています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
spread one’s wings の絵になるのは、巣の縁に立った小鳥です。それまで巣の中で守られていた小鳥が、縁で翼をぐっと広げて、空へ踏み出そうとしています。広げた翼が、飛び立つ前の準備の姿です。
spread は「広げる」、wings は「翼」。この絵を頭に置くと、spread one’s wings の意味が、形のままイメージできます。翼を広げているのは小鳥自身で、見守る側にできるのは、広げるのを邪魔しないことです。
フィルの let them spread their wings は、まさにこの絵と重なります。let は「させてやる」、them は送り出す相手、their wings は相手自身の翼。送り出す側が翼を広げさせる、つまり邪魔せずに広げるのを許す、という関係を、let + 人 + 原形の形が表しています。巣の縁の小鳥と let の形が結びつけば、誰かを送り出す場面でこの表現がすぐに浮かびます。
例文で覚える「spread one’s wings」
spread one’s wings は、独り立ちや新しい挑戦を語る場面で使えます。3つの例文で、主語に合わせて変わる所有格も確認していきましょう。
After graduation, she moved to a new city to spread her wings.
(卒業後、彼女は羽を広げるために新しい街へ引っ越した。)
独り立ちを語る日常の場面です。主語が she なので、one’s の部分は her になっています。
A: Why did you leave your hometown?
B: I wanted to spread my wings and try something new.
(A:なぜ地元を離れたの?)
(B:自分の力を試して、新しいことに挑戦したかったんだ。)
引っ越しの理由を話す友人同士の会話です。主語が I なので my になり、and try something new が続いて、挑戦の中身を添えています。
The new project gives young employees a chance to spread their wings.
(その新しいプロジェクトは、若手社員が力を試すチャンスになる。)
職場で若手を応援する場面です。主語にあたる young employees に合わせて their になり、a chance to ~ の型と組み合わさっています。
あわせて覚えたい関連表現
leave the nest
(巣立つ、親元を離れる)
leave the nest は、親元を離れるという出来事に焦点があります。spread one’s wings は、離れたあとに自分の力を試し始める挑戦の姿勢に焦点があります。
stand on one’s own two feet
(自分の足で立つ、自立する)
stand on one’s own two feet は、経済的・精神的な自立を表します。spread one’s wings には、自立に加えて、新しい世界へ広がっていく前向きな響きがあります。
hold someone back
(人を引き止める、前進を妨げる)
hold someone back は、相手の進む力を抑える側の動作です。フィルが自分の行動を振り返ったときに使った言い方で、spread one’s wings とは反対の側にあります。
Note|「羽ばたく」「巣立つ」「飛び立つ」と spread one’s wings の対応
spread one’s wings を日本語にすると、「羽ばたく」「巣立つ」「飛び立つ」といった訳語が候補になります。ここでは、構成する語の文字どおりの意味と比喩の関係をたどりながら、日本語の訳語とのずれを整理します。
英語の側から見ると、spread は「広げる」、wings は「翼」で、文字どおりには「翼を広げる」という動作を指します。鳥が飛び立つ前に翼を広げる姿を、人が自分の力を試し始める姿にたとえたのが、この表現です。つまり英語は、飛び立つ動作そのものではなく、その手前の「広げる」という動作に焦点を置いています。
日本語の側では、「羽ばたく」は翼を動かして飛ぶ動作そのものを表すため、英語の spread より一歩先の段階を指します。「巣立つ」は、巣を離れるという出来事を表し、英語では leave the nest が近い言い方です。「飛び立つ」は、地面や巣から空へ出ていく瞬間を表します。英語の spread one’s wings は、これらの手前にある準備の動作を言い表しているため、どの日本語も少しずつ焦点がずれます。
ですから、日本語に直すときは、場面に合わせて訳語を選びます。親元を離れる出来事を言いたいなら「巣立つ」、自分の力を試し始める姿勢を言いたいなら「羽を広げる」「羽ばたく」と使い分けると、元の英語の焦点に近づきます。
フィルの let them spread their wings には、「羽ばたかせてやらなきゃ」という訳語を当てても、「羽を広げさせてやる」と訳しても、意味は通じます。どちらを選ぶかは、日本語として自然に聞こえるかどうかで決まります。
まとめ|送り出す側の言葉として
spread one’s wings は、守られていた場所を離れて、自分の力で新しいことに挑戦し始めることを表す表現です。one’s は主語に合わせて変わり、let + 人 + 原形の形でも使えます。
「羽ばたく」「巣立つ」「飛び立つ」と日本語は豊富ですが、英語が見ているのは、翼を広げる手前の動作です。巣立つ出来事は leave the nest、引き止める側の動作は hold someone back が受け持ちます。
フィルが語った let them spread their wings は、送り出す側の言葉でした。誰かを送り出す日が来たとき、どんな言葉を添えたくなるでしょうか。


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