「make it up to」の意味と使い方|『BONES』S01E06で学ぶ英会話

make it up to

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

自分の都合で相手の予定を台無しにしてしまったとき、ごめんの一言だけでは足りない気がして、その場で何か差し出したくなることがあります。それが的外れな提案になってしまうことも含めて、思い当たる場面ではないでしょうか。

そんなときに使われる「make it up to」を、『BONES』シーズン1第6話の序盤、ディナーの途中で呼び出されたブースが、恋人テッサを事件現場まで連れてきてしまい、帰ろうとする彼女を引き止めるシーンから、一緒に見ていきましょう。

目次

「make it up to」の意味とニュアンス

make it up to (someone)
意味:(人に)埋め合わせをする、償う

迷惑や不義理をかけた相手に対して、この先の行動で釣り合いを取り戻すと申し出る言い方です。謝罪の言葉で終わらせず、何かをすると宣言するところに重心があります。

it が何を指すのかは明示されません。壊してしまった予定、無駄にさせた時間、傷つけた気持ち。そのすべてをまとめて it の一語が引き受けています。細かく数え上げずに済むところが、この表現の使いやすさになっています。

to のあとに来るのは相手の人です。埋め合わせが向かう先は、失われた事柄ではなく、それを被った側のほう。この向きが表現の性格を決めています。

形はほとんどが未来を指すもので、I’ll make it up to you が定番です。具体案を添えなければ意思表明、添えれば提案になります。

【ここがポイント!】

  • 謝罪の言葉ではなく、この先の行動で釣り合いを取り戻すと申し出る表現
  • it が迷惑の中身をまとめて引き受けるので、細かく説明せずに使える一言
  • 埋め合わせが向かうのは事柄ではなく相手の人、というのが形を間違えないコツ

『BONES』S01E06のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

ブースは恋人テッサとディナーの最中に呼び出しを受け、そのまま彼女を現場のクラブへ連れてきています。壁から現れたのはミイラ化した遺体。舞い上がった薬物を吸い込んだブレナンとアンジェラは、まともな状態ではありません。そのアンジェラが、ブースとテッサの関係にまで口を出しはじめたところで、テッサの我慢が切れます。

Angela: It’s so hard to believe that you two would be a couple. You know, cop and lawyer. It’s very touching.
(二人がカップルだなんて、ちょっと信じられないわ。刑事と弁護士でしょ。感動的よね)

Tessa: I’m gonna grab a cab.
(タクシーを拾って帰るわ)

Booth: Oh, no. Oh, ok, hold up. Uh sorry, sorry. I apologize. Here, I’m gonna make it up to you, I promise, ok? Ice cream later? Take care.
(いや、待った、待ってくれ。悪い、本当に悪かった。ほら、埋め合わせはするから、約束する、な? 後でアイスでもどうだ? 気をつけて)

Tessa: I’ll talk to you later.
(また連絡するわ)

Booth: Talk to you later.
(ああ、また連絡する)

BONES Season1 Episode6 (The Man in the Wall)

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シーン解説と心理考察

ブースの言葉の並びが見どころです。sorry を二度重ね、I apologize と言い直し、そのうえで make it up to you へ進む。謝罪を三段重ねても足りないと本人が分かっていて、だから行動の約束まで持ち出しています。

ところが差し出されたのは、アイスクリームでした。ディナーを腐乱死体の現場に変えてしまった落差に対して、提案があまりに軽い。しかも彼はタクシー代を握らせながらそう言っています。誠意はあるのに見積もりだけが合っていない、という不器用さがこの一言に集まっています。

テッサの返しも巧みです。I’ll talk to you later は、受け入れでも拒絶でもありません。判断を先送りにする言い方で、埋め合わせの申し出そのものには触れずに場を離れています。

そしてブースは同じ言葉をそのまま返します。押さない、追いかけない。この引き際の速さが、彼がこの状況をどう見ているかを静かに示しています。背後ではブレナンとアンジェラが茶化していて、当人の必死さと外野の温度差までが一つの画に収まっています。

『BONES』流・覚え方のコツ

片側が下がったままのシーソーを思い浮かべてみます。こちらの不注意で、相手の座っている側が地面まで落ちてしまった。ここでやるべきなのは、自分が飛び降りることではなく、下がった側を元の高さまで押し上げることです。

make it up to の up は、その持ち上げる動きを指しています。そして押し上げる相手が座っているほうへ、to が向かっている。前置詞が指しているのは、埋め合わせの届け先です。

劇中でブースがテッサ側に載せようとしたのは、アイスクリーム一つでした。落ちた高さに対して軽すぎて、シーソーはほとんど動きません。下がっているのは相手の側で、押し上げる方向は上。この二つを押さえておけば、to のあとに人が来る理由も一緒に納まります。

例文で覚える「make it up to」

意思だけを示す形と、具体案まで添える形があります。3つの例文でその幅を見てみましょう。

I’m sorry I missed your recital. Let me make it up to you this weekend.
(発表会に行けなくてごめん。今週末に埋め合わせをさせて)
約束をすっぽかした相手に切り出す場面です。Let me を前に置くと、押しつけではなく申し出の形になります。

We know the delay caused problems, and we’ll make it up to you.
(今回の遅延でご迷惑をおかけしました。必ず埋め合わせをいたします)
取引先への謝罪です。中身を先に言わず意思だけを示しておいて、後から具体案を添えられます。

A: You cancelled on me twice this month.
B: I know. I’ll make it up to you, I promise.
A: You said that last time.
(A:今月、2回もドタキャンしたよね)
(B:わかってる。埋め合わせはするから、約束する)
(A:それ、この前も言ってた)
約束が続かない相手とのやり取りです。I promise を添えても受け取ってもらえるとは限らない、というところに会話の妙があります。

あわせて覚えたい関連表現

I owe you one
(借りができた、この埋め合わせはするよ)
返す意思を示す点は同じですが、使うのは助けてもらった側です。迷惑をかけた側が言う make it up to とは、負い目の出どころが逆になります。

make amends
(償う、埋め合わせをする)
改まった硬い言い方で、謝罪文や公式の声明に向きます。日常の軽い埋め合わせを申し出る場面なら、make it up to のほうが自然に響きます。

make it right
(きちんと元に戻す、正す)
相手に何かを差し出すのではなく、狂った状態そのものを正しい形に戻すという言い方です。企業が不備を認めるときによく選ばれます。

Note|make up / make up for / make it up to ―― 前置詞が決める向き

make it up to は、単語のひとつひとつが易しいのに、いざ書こうとすると形を崩しやすい表現です。よく似た言い方が近くに二つあるからです。

make up だけなら、意味は複数に散らばります。仲直りするという自動詞的な使い方、話をでっち上げるという他動詞、それに化粧をするという用法まで、共通するのは何かを組み立てて成立させるという感覚くらいです。

make up for になると、輪郭がはっきりします。for のあとに置かれるのは、埋めるべき欠損のほうです。make up for lost time なら失われた時間、make up for the delay なら遅れそのもの。何が足りないのかを名指しして、その穴を埋める形になります。

そして make it up to では、to のあとに人が立ちます。埋めるべき中身は it に押し込められ、名指しされるのは届け先だけ。だから I’ll make it up to you とは言えても、I’ll make it up to the delay とは言えません。for のあとには事柄、to のあとには人。前置詞が、埋め合わせの向かう先を決めています。

劇中のブースが選んだのも、この to の形でした。埋めるべきは台無しになった夜そのもののはずですが、彼が向き合ったのは目の前のテッサです。中身が漠然としたままでも申し出が成立するのは、この表現が事柄ではなく人を向いているからでした。

同じ up でも、どちらを向いているかで別の言葉になります。

まとめ|「ごめん」のあとに置く一言

make it up to は、謝罪の言葉で止まらず、この先の行動で釣り合いを取り戻すと申し出る表現です。埋め合わせるべき中身は it に預けたまま、相手のほうだけをはっきり指し示します。

この一言があると、具体案がまだ用意できていない段階でも姿勢を伝えられます。何をするかは後で決めるとしても、放置しないという意思だけは先に置ける。謝罪と行動のあいだをつなぐ言い方として重宝します。

三度謝ってもまだ足りないと感じたブースが、最後に持ち出したのがこの表現でした。差し出したものは軽くても、向き合おうとした方向は間違っていません。伝えにくい場面のために、表現の引き出しに加えてみてください。

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