海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
まとまりきらない考えを抱えたまま、誰かに話してみたくなることはありませんか。答えがほしいわけではなく、口に出したときに相手がどんな顔をするかを見たい。そんなときがあります。
そんな行為をそのまま言い表す「bounce A off B」を、『BONES』シーズン1第8話の後半、ブースがブレナンに、ある人物とどこまで捜査情報を共有しているのかを尋ねるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「bounce A off B」の意味とニュアンス
bounce A off B
意味:A を B にぶつけて反応を見る、B に意見を求める
bounce は跳ね返る、跳ね返らせるという動きを表します。壁に向かってボールを投げれば、投げた勢いのまま返ってくる。A に入るのがアイデアや考えで、B に入るのが相手です。つまり人を壁に見立てた言い方になります。
この表現の芯にあるのは、返ってくることを前提にしている点です。ただ聞いてもらうのではなく、反応という形で戻ってくるものを受け取りにいく。だから A に入るのは、完成した提案よりも、まだ形になりきっていない思いつきであることが多くなります。
off という前置詞も効いています。to ではなく off が選ばれるのは、相手に届けて終わりではなく、相手の面に当たって離れる動きだからです。会議の場で正式に諮るのとは違い、廊下で捕まえて話すような軽さがあります。
A の位置には ideas、thoughts、this proposal などが、B の位置には人が入ります。
【ここがポイント!】
- 相手を壁に見立てて考えを投げ、跳ね返りを受け取るという絵が芯にある表現
- 完成品ではなく、まだ固まっていない段階のものを投げるときに似合う一言
- to ではなく off なので、投げっぱなしにせず反応まで受け取るのがコツ
『BONES』S01E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
冷蔵庫から見つかった少女の遺体をめぐる捜査が、ひとまず区切りを迎えます。ラウンジでその報告を伝えたブースですが、どうにも落ち着かない様子で、もうひとつ聞きたいことがあると切り出します。ブレナンのかつての指導教授マイケルが、このところ研究所に出入りしていました。ところが最初の一往復から、二人の話は少し噛み合いません。
Booth: Uh, Bones, I have to ask. How much have you been sharing with, uh, the professor?
(あー、ボーンズ、聞いておかなきゃならない。あの教授とは、どこまで共有してるんだ?)Brennan: None of your business.
(あなたには関係ないことよ。)Booth: I mean, on the case.
(いや、事件のことだよ。)Brennan: Oh. I bounce everything off him. Why?
(ああ。何でも彼にぶつけて意見をもらっているわ。どうして?)Booth: Well, you gotta keep him out of it from now on.
(これからは、彼を関わらせちゃだめだ。)BONES Season1 Episode8 (The Girl in the Fridge)
シーン解説と心理考察
最初のすれ違いが、この場面の可笑しみを作っています。ブースの How much have you been sharing という聞き方は、あまりに漠然としていました。言いよどむ uh が二度も挟まっているところに、彼が本当は何を気にしているのかが表れています。そこへブレナンが None of your business と切り返す。私生活のことだと受け取ったわけです。
慌てて I mean, on the case と言い直すブースの一言に、彼の焦りがにじみます。そして返ってきたのが I bounce everything off him でした。何でも、という部分が、この直後の展開を重くします。
ブレナンにとって bounce off は、科学者同士の当たり前のやり取りでした。信頼している相手だからこそ、途中の考えも遠慮なく投げられる。その信頼が、このあと別の意味を持つことになります。ブースが keep him out of it という強い言い方を選んだのには、彼なりの理由がありました。
『BONES』流・覚え方のコツ
壁当ての情景を思い浮かべてみましょう。ボールを持って壁の前に立ち、投げる。壁は何も言いませんが、角度と勢いをそのまま返してきます。投げ方が悪ければ、返り方でそれが分かる。bounce A off B は、この動きを会話に移した表現です。
大事なのは、壁の質です。柔らかすぎれば返ってこないし、でこぼこしていれば思わぬ方向へ飛んでいく。誰を B の位置に置くかで、返ってくるものが変わります。
ブレナンにとってマイケルは、投げたものを正確に返してくれる壁でした。だからこそ everything を投げていた。この場面の緊張は、その壁が実は向こう側を向いていたところから生まれています。壁の向きまで含めて覚えておくと、この表現の使いどころがはっきりします。
例文で覚える「bounce A off B」
相談を持ちかける場面で最もよく使われる表現です。3つの例文で、その呼吸を見てみましょう。
Can I bounce a few ideas off you before the meeting?
(会議の前に、いくつか考えをぶつけてみてもいいですか。)
同僚をつかまえて相談を持ちかける場面です。before を添えると、正式な提案ではない段階だと伝わります。
I bounced the proposal off my manager and she liked the direction.
(その企画を上司にぶつけてみたら、方向性は気に入ってくれました。)
非公式に感触を確かめた結果を報告する場面です。過去形にすると、根回しの経過を語る形になります。
A: You’ve been staring at that screen for an hour.
B: Yeah. Mind if I bounce something off you?
A: Go ahead. I’m not promising answers.
(A:1時間もその画面をにらんでいるね。)
(B:うん。ちょっと聞いてもらってもいい?)
(A:どうぞ。答えは保証しないけど。)
行き詰まったときに助けを求める会話です。Mind if I と組むと、相手の負担を軽くできます。
あわせて覚えたい関連表現
run something by someone
(〜に話を通す、確認を取る)
相手の承認や了解を得る目的が前に出る言い方です。反応を見たい bounce off に対して、こちらは通すことそのものが目的になります。
pick someone’s brain
(知恵を借りる)
相手が持っている知識を引き出す方向の表現です。自分の考えを投げる bounce off とは、動きの向きが逆になります。
sound someone out
(それとなく意向を探る)
相手の考えや立場を、直接聞かずに確かめる言い方です。自分の案を見せる bounce off に対して、こちらは手の内を明かさずに探ります。
Note|壁打ちが成り立つ条件
bounce A off B は、誰にでも使える表現ではありません。B の位置に置ける相手は限られます。
組織のなかでこの差を生むものとして、近年よく取り上げられるのが心理的安全性という考え方です。ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソンが1999年の論文で示した概念で、対人関係の危険を冒しても罰せられないと全員が信じている状態を指します。彼女がもともと注目したのは、優秀とされる医療チームほど投薬ミスの報告件数が多いという、一見奇妙なデータでした。実際にミスが多かったのではなく、報告できる空気があったということです。グーグルが社内の多数のチームを分析したプロジェクト・アリストテレスでも、成果を左右する最大の要因として同じ概念が挙げられています。
未完成の考えを口に出すのは、間違えるかもしれない自分を差し出すことでもあります。bounce off が成り立つのは、それが安全だと思える相手の前だけです。Can I bounce something off you? という一言が軽く聞こえるのは、その安全がすでに前提になっているからでしょう。
投げる側の勇気より、受ける側の面の作り方が問われる表現です。
まとめ|良い壁は、返してくれる
bounce A off B は、自分の考えを相手にぶつけて、返ってくるものを受け取る表現です。届けて終わりではなく、跳ね返りまでが一続きになっている。off という前置詞が、その往復をひとことで示しています。
この一言があると、まとまっていない段階の考えも相談に出せるようになります。完成してから見せるのではなく、途中で投げてみる。手戻りを減らすうえでも役に立つ言い方です。
信頼している相手にだからこそ、何でも投げられる。ブレナンとマイケルのやり取りは、その前提がどれほど大きいものかを裏側から見せてくれます。相談を持ちかけたい相手を思い浮かべながら、表現の引き出しに加えてみてください。


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