海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
友人の突拍子もないアイデアに、褒めていいのか呆れていいのか迷って、思わず言葉に詰まってしまった経験はありませんか。
そんなときに使える「put a price on」を、『フレンズ』シーズン5第23話の終盤、カジノで一攫千金のアイデアに夢中になるジョーイと、それを聞かされたチャンドラーのやり取りから、一緒に見ていきましょう。
「put a price on」の意味とニュアンス
put a price on
意味:〜に値段をつける、〜の金銭的価値を測る
put a price on は、「put a price on + 名詞」の形で、あるものに具体的な金額・価値を設定するという意味を表します。price(価格)という語がそのまま入っているとおり、直訳に近い、分かりやすい成り立ちの表現です。
この表現がおもしろいのは、否定形で使われたときの含みの広さです。”I can’t put a price on that.”と言うと、文字どおりには「値段のつけようがない」という意味ですが、文脈によって「金額では測れないほど価値がある」というポジティブな意味にも、「評価のしようがない、的外れだ」という皮肉にも転びます。
肯定文で使う場合はシンプルに「値付けする」という意味になりますが、否定形になった途端、話し手の本音を探る必要が出てくる、文脈依存性の高い表現と言えます。
【ここがポイント!】
- 核は「あるものに具体的な金額・価値を設定する」というシンプルな成り立ち
- 否定形になると「価値が高すぎる」から「的外れだ」まで幅広く転ぶ
- 話し手のトーンや前後の文脈で、本音を読み取るのがコツ
『フレンズ』S05E23のシーンで見てみよう
映画の資金難をきっかけに、ジョーイはカジノのディーラーと自分の手がそっくりだったことに目をつけ、新たな金儲けのアイデアに夢中になります。
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。前のめりに語るジョーイに対して、チャンドラーがどう応じるかに注目です。
Joey: This is Vegas, man. People will pay to see freaky stuff. How much would you pay to see this hand… twice?
(ここはベガスだぜ。奇妙なものを見るためなら人は金を払うんだ。この手を、しかも2回も見るのにいくら払う?)Chandler: You know, I can’t really put a price on that, Joe.
(いや、それはちょっと値段のつけようがないな、ジョー。)Joey: Hey, are you unsupporting me again?
(おい、また応援するのやめようとしてる?)Friends Season5 Episode23(The One in Vegas, Part 1)
シーン解説と心理考察
「how much would you pay to see this hand… twice?(この手を2回も見るのにいくら払う?)」という問いかけには、根拠の薄いアイデアを本気で信じ込んでいるジョーイらしい前のめりな高揚感が表れています。映画の資金難という不本意な状況を、逆手に取ろうとする発想の転換ぶりも見どころです。
対するチャンドラーの「I can’t really put a price on that, Joe(それはちょっと値段のつけようがないな)」という返しは、額面通りには「価値が測れないほどすごい」とも取れますが、文脈上は「値段のつけようがないほど的外れだ」という皮肉交じりの返答として響きます。それを察したジョーイが「are you unsupporting me again?(また応援するのやめようとしてる?)」と即座に切り返すやり取りには、このエピソード冒頭からの「ジョーイの映画を信じる・信じない」というチャンドラーとの関係性の伏線が、カジノという場面で回収されている様子が表れています。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
put a price on を覚えるコツは、天秤に品物を乗せて、その重さに応じた値札を貼りつけるイメージを思い浮かべることです。price on という語順そのままに、「その上に値段を置く」という物理的な動作として捉えると、意味が記憶に定着しやすくなります。
本シーンのチャンドラーのように、あえて肯定とも皮肉とも取れる言い方でこの表現を使うと、直接的な言葉を避けながら本音をやんわり伝えられます。値札を貼るという具体的な動作と、その裏に隠れた話し手の温度をセットで覚えておくと、文脈判断の練習にもなります。
例文で覚える「put a price on」
put a price on は商品の値付けにも、金銭に換算できない気持ちを語るときにも使える表現です。ビジネス・個人的な感情・皮肉まじりの会話の3パターンで感覚をつかんでいきましょう。
The company needs to put a price on the new service before launch.
(会社は発売前に新サービスの値付けをする必要がある。)
ビジネスの場面で、商品やサービスの価格設定について話す例です。
You can’t put a price on the time we spent together as a family.
(家族で過ごした時間に値段はつけられない。)
思い出や絆など、金銭に換算できないものについて語る場面です。
A: I finally finished my first novel after five years.
B: Wow, I can’t even put a price on that kind of dedication.
(A:5年かけてやっと最初の小説を書き終えたよ。)
(B:すごいね、その粘り強さには値段のつけようがないよ。)
相手の努力を心から称賛する会話の一場面です。
あわせて覚えたい関連表現
price tag
(値札、値段)
名詞として「値段」そのものを指す表現です。put a price on が「値段をつける」という行為を表すのに対し、price tag はすでについている値段の結果を指します。
worth every penny
(お金を払うだけの価値がある)
支払った金額に見合う、あるいはそれ以上の価値があると評価するときの表現です。put a price on が値付けの行為そのものを扱うのに対し、こちらは支払い後の満足感を表します。
priceless
(お金に換算できないほど貴重な)
文字どおり「値段がつけられない」という一語です。can’t put a price on とほぼ同じ意味を、より簡潔に一語で表せる言い換えとして使えます。
Note|「値段のつけようがない」を表す英語独特の言い回し
put a price on を否定形で使ったときの意味の振れ幅は、英語らしい表現のあり方をよく表しています。日本語に直訳しづらいこの独特さを、少し掘り下げてみましょう。
英語では、具体的な行為(値段をつける)を否定することで、抽象的な評価(価値が測れない)を間接的に表現する言い方がよく使われます。”I can’t put a price on that.”も、その典型例です。文字どおりには「値段をつける行為ができない」という意味ですが、実際に伝えたいのは「金額で測れるようなものではない」という抽象的な評価です。日本語であれば「かけがえのない」「値がつけられないほど」のように、最初から評価の言葉で表現することが多いのに対し、英語では動作を否定する形を経由して、遠回しに価値の大きさを伝える発想が見られます。
この間接的な言い回しだからこそ、本シーンのチャンドラーの返しのように、ポジティブにもネガティブにも読める余白が生まれます。もし最初から「that’s a stupid idea(それはばかげたアイデアだ)」と直接的に言っていたら、ジョーイとの関係性を保ったユーモラスなやり取りにはならなかったはずです。行為の否定を経由することで、本音を包み隠しながら伝える、という英語らしい間接性がここに表れています。
具体的な動作を否定して抽象的な評価を語る、という発想の転換を知っておくと、似たタイプの表現にも気づきやすくなります。
まとめ|「値段のつけようがない」を一言で
put a price on は、あるものに具体的な金額・価値を設定するという、成り立ちのシンプルな表現です。ただし否定形になると、称賛にも皮肉にも転ぶ幅広さを持つ、文脈依存性の高い言い回しになります。
ジョーイとチャンドラーのやり取りが示すように、この表現は直接的な言葉を避けながら本音を伝える場面でも力を発揮します。友人の突拍子もない思いつきに、呆れながらもどこか付き合ってしまう二人の空気感が、その一言にそのまま溶け込んでいる場面でした。


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