海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
家族の心配事があるとき、気持ちがすっかり乱れて落ち着かなくなってしまった経験はありませんか。
そんな心境にぴったりの「be beside oneself」を、『モダンファミリー』シーズン3第17話の中盤、祖父の農場の被災状況を気にかけるキャメロンが、母親の様子をミッチェルに伝える場面から、一緒に見ていきましょう。
「be beside oneself」の意味とニュアンス
be beside oneself
意味:(心配や動揺で)取り乱す、我を忘れる
be beside oneselfは、感情があまりにも強すぎて、まるで自分自身のそばにもう一人の自分が立っているかのような、平常心を保てない状態を表す慣用表現です。withを伴って、worry(心配)やgrief(悲しみ)、joy(喜び)といった感情の種類を示す使い方がよく見られます。
直訳すると「自分の横にいる」という不思議な表現ですが、これは「感情の高ぶりによって、本来の自分から一歩外に押し出されてしまったような状態」を指しています。家族の心配事や悲しい知らせ、我慢の限界を超えた怒りなど、平常心ではいられないほど感情が高ぶった場面で使われる表現です。
主語がoneselfと同じ人物を指すため、she was beside herself、he was beside himselfのように、主語に合わせて再帰代名詞を変える点にも注意が必要です。この一致を意識しておくと、とっさの会話でも自然に組み立てやすくなります。beと組み合わせるだけで完成する短い形なので、感情が高ぶった瞬間にもすぐ口をついて出やすい表現でもあります。
【ここがポイント!】
- 「be beside oneself」の核は、感情の高ぶりで平常心を失っている状態
- with worry / grief / joyなど感情を表す語とセットで使われることが多い表現
- 直訳「自分の横にいる」から、我を忘れるイメージを連想するのがコツ
『モダンファミリー』S03E17のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
誕生日パーティーの準備中に携帯電話を取りに戻ってきたキャメロンが、竜巻の被害を受けた祖父の農場の様子をミッチェルに説明する場面です。パーティーの準備という日常の裏で語られる、母親の心境を伝えるキャメロンの言葉に注目です。
Cameron: I left my cell phone in your car and I gotta be in touch with mama today. She’s talking to the insurance agency for the first time to see if they’re gonna rebuild grandpa’s farm.
(車に携帯電話を忘れちゃって、今日はママと連絡を取らなきゃいけないんだ。保険会社と初めてやり取りしてて、おじいちゃんの農場を再建してもらえるかどうか話してるんだよ。)Mitchell: I totally missed the connection. A month after the most devastating twister to ever hit Cam’s hometown, I throw a party based on gay cinema’s most famous tornado.
(全然つながりに気づいてなかった。キャムの地元を襲った最悪の竜巻から1か月後に、ゲイ映画界で最も有名な竜巻をテーマにしたパーティーを開こうとしてたなんて。)Cameron: Yeah, you know, it’s been a month, and she hasn’t heard anything, and she’s just beside herself. And then you know what else? Lily succumbed to her injuries.
(そうなんだ、もう1か月経つのに、何も連絡が来なくて、ママはもうすっかり取り乱してるんだ。それに、聞いてくれる? リリーが怪我がもとで死んじゃったんだよ。)Mitchell: Your aunt Lily died?
(リリーおばさんが亡くなったの?)Cameron: No, the family pig.
(違うよ、うちで飼ってた豚だよ。)Modern Family Season3 Episode17 (Leap Day)
シーン解説と心理考察
キャメロンは、竜巻の被害を受けた祖父の農場について、母親が保険会社からの連絡を1か月待ち続けてもなお何も聞けていないと説明し、その心境を「beside herself」の一言で言い表しています。キャメロンの言葉には家族を案じる気持ちがにじみます。
ミッチェルは、自分が竜巻をテーマにしたパーティーを企画していたことと、キャメロンの地元の竜巻被害が重なっていることに今さら気づき、動揺を見せます。パーティー準備という華やかな出来事の裏で、家族の心配事が同時に進行していたことが、この場面から見えてきます。
今さら気づいたと振り返るミッチェルの言葉からは、キャメロンの家族を軽んじているわけではなく、単純に気づかなかっただけだという事情が伝わってきます。深刻な話題の直後に、思わぬ形で誤解が解ける軽妙な間の取り方も、この場面の会話らしいところです。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
自分の「そば(beside)」に、もう一人の自分が立っているような状態をイメージしてみましょう。感情があまりに強すぎて、いつもの自分から一歩外に押し出されてしまっているような様子です。
キャメロンの母親が1か月も返事を待ち続けて取り乱していたように、待ち続ける時間の長さと感情の高ぶりが重なるほど、beside oneselfという言葉がしっくりくる場面が増えていきます。そう考えると、平常心からじりじりと押し出されていく感覚がつかみやすくなります。
例文で覚える「be beside oneself」
感情が高ぶる場面で使われるbe beside oneselfを、3つの例文で確認していきましょう。
She was beside herself with worry when her son didn’t come home on time.
(息子が時間通りに帰ってこなかったとき、彼女は心配で我を忘れていた。)
親が子を心配する場面です。withのあとに具体的な感情を添えることで、何にそこまで取り乱しているのかが明確になり、心配の度合いの強さも自然に伝わります。
The coach was beside himself with frustration after the team lost the final.
(決勝で負けた後、コーチは悔しさで取り乱していた。)
試合後の様子を伝える場面です。frustrationのような具体的な感情語を選ぶことで、単なる落胆以上の強さが伝わります。感情語の選び方次第で、伝わる動揺の種類も変わってくる点に注目です。
A: Have you told him the news yet?
B: Not yet, he’ll be beside himself when he hears it.
(A:もう彼にそのニュース伝えた?)
(B:まだだよ、聞いたら取り乱すだろうね。)
知らせを伝える前の会話です。未来の反応を予測する形でも自然に使えます。
あわせて覚えたい関連表現
lose it
(取り乱す、キレる)
be beside oneselfより口語的でカジュアルな表現です。怒りだけでなく、笑いすぎて抑えが効かなくなる場面にも使われます。
out of one’s mind (with worry/grief)
(心配や悲しみで気が狂わんばかりになる)
be beside oneselfとほぼ同じ意味を持ちますが、with worryなどを添えることも多い、口語的な表現です。be beside oneselfより強い切迫感を持つ言い方です。
fall apart
(精神的に崩れる、取り乱す)
be beside oneselfが一時的な強い感情の高ぶりを指すのに対し、fall apartは持続的な精神的崩壊を指すことが多い表現です。
Note|「我を忘れる」では届かない、besideの空間イメージ
be beside oneselfは「我を忘れる」「取り乱す」と訳されますが、この訳だけでは、英語表現そのものが持つ空間的なイメージまでは伝わりきりません。
besideはもともと「〜のそばに」「〜の横に」という位置関係を表す前置詞です。be beside oneselfを文字どおりに読むと「自分自身の横にいる」という、少し不思議な状態を表していることになります。これは、感情があまりにも強くなりすぎて、まるでもう一人の自分が体から抜け出し、本来の自分の隣に立っているかのような感覚を表した比喩表現です。こうした空間的な言い換えとして読むとイメージしやすくなります。日本語の「我を忘れる」が感情に「飲み込まれる」ようなイメージであるのに対し、英語のbe beside oneselfは、感情によって自分自身から「押し出される」「切り離される」ようなイメージに近い言い方です。似たような空間的な比喩は英語には多く見られ、たとえばbeside the pointは話の要点から「外れている」ことを表します。位置関係を表す前置詞が感情や状況の表現にまで応用される点は、英語ならではの発想の広がりだと言えます。同じ「そば」を意味する前置詞でも、置かれる文脈によってこれほど違う意味の広がりを持つのは、英語の慣用表現に触れる面白さのひとつです。
キャメロンの母親が「beside herself」だったのも、心配のあまり平常心という本来の位置から一歩外に押し出されてしまっていたからだと考えると、このフレーズの空間イメージがより実感を持って伝わってきます。前置詞ひとつが、感情の強さまで運んでくれる好例と言えます。
位置を表す一語が、心の状態までも語ってくれる表現です。
まとめ|家族を思う気持ちが滲む、be beside oneselfの一言
be beside oneselfは、感情の高ぶりによって平常心を失っている状態を表す表現です。
家族の心配事や悲しい知らせなど、withのあとに具体的な感情を添えることで、どんな種類の動揺なのかを的確に伝えられます。
キャメロンが母親の様子を語った一言には、竜巻の被害に遭った家族を案じる気持ちが静かに表れていました。返事を待つ時間が長引くほど募っていく不安を、大切な人の心境として伝えたい場面で、表現の引き出しに加えてみてください。


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