海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『モダンファミリー』シーズン9第2話では、ミッチェルとキャメロンの家のキッチンが焼けてしまいます。原因をめぐって、ミッチェルはキャメロンを疑い、やがて二人とも自分のせいだと口にし、最後は別の誰かのせいにしようとします。
人をはっきり責めるのも、自分の非をはっきり認めるのも気まずい場面では、英語にも言葉をぼかす型があります。否定しながら含みを残すこの回の会話から、その型を拾っていきます。
「I’m not saying ~」で否定しながら疑う
キッチンが焼けたあと、ミッチェルは改装の話と結びつけて、こう語ります。
Mitchell: I’m not saying Cam definitely set the fire.
(キャムが絶対に火をつけたって言ってるわけじゃないよ。)Mitchell: It could have been anyone who‘s spent years searching for a way to justify the remodel of our kitchen.
(うちのキッチンを改装する口実を何年も探してた人なら、誰だってありえたってだけさ。)Modern Family Season9 Episode2 (The Long Goodbye)
I’m not saying ~ は「〜と言っているわけではない」と、断定を避ける前置きです。ところが続く It could have been anyone who ~ は「〜した人なら誰でもありえた」という形で、条件に当てはまる人物を実質的に一人に絞っています。名前を出さずに相手を指す、遠回しな疑い方と言えます。I’m not saying you’re wrong, but ~(間違っているとは言わないけど〜)のように、後ろに but を続けて本題を出す形もよく耳にします。
その含みは、キャメロンにも伝わります。
Cameron: Are you actually accusing me of starting this fire just so we could rebuild our hideous kitchen?
(僕がこのひどいキッチンを建て直したくて火をつけたって、本気で疑ってるの?)Mitchell: Uh, accusing, no.
(いや、疑ってるってわけじゃ。)Mitchell: but when you say things like “hideous kitchen,” it does make me wonder.
(でも「ひどいキッチン」なんて言われると、ちょっと考えちゃうよね。)Fireman: This could be the cause.
(これが原因かもしれません。)Fireman: Most kitchen fires start in the oven.
(キッチンの火事の多くはオーブンから始まるんです。)Modern Family Season9 Episode2 (The Long Goodbye)
accuse someone of ~ing は「〜したと人を責める、疑う」です。ミッチェルは accusing, no. と一度否定してから、but ~ it does make me wonder. で疑いを残します。does は wonder を強める助動詞で、「やっぱり気になってしまう」という含みが加わります。消防士の This could be the cause. も、could で可能性にとどめています。
「a small chance」と「definitely」が並ぶ認め方
このあと、パムは散歩に出る前にオーブンを消したと話します。それを受けて、ミッチェルはこう口にします。
Mitchell: There’s a small chance I definitely started the fire.
(僕が確実に火をつけた可能性が、ちょっとだけある。)Modern Family Season9 Episode2 (The Long Goodbye)
There’s a small chance ~ は「〜の可能性が少しある」とぼかす前置きです。そこに definitely(確実に)を入れたことで、言葉の上ではぼかしながら、中身は認めてしまっている一文になっています。矛盾する二語を並べて、自分の非を半分だけ口にする言い方です。
一方のキャメロンは、理想のキッチンのビジョンボードをミッチェルの運動着の後ろに隠していたと明かしたあと、こう打ち明けます。
Cameron: I-I-I think I accidentally, on purpose, subconsciously, willfully, burned our kitchen down.
(僕、うっかり、わざと、無意識に、自分の意思で、うちのキッチンを燃やしちゃったんだと思う。)Mitchell: Okay.
(そうか。)Mitchell: I-I don’t I don’t know about that.
(いや、それはどうかな。)Cameron: Um
(えっと)Cameron: No.
(いや。)Cameron: Let’s face it.
(現実を見よう。)Modern Family Season9 Episode2 (The Long Goodbye)
accidentally(うっかり)と on purpose(わざと)、subconsciously(無意識に)と willfully(自分の意思で)は、意味が正反対の副詞の組み合わせです。それを一続きに並べたことで、自分のせいだと言いながら、どこまで意図があったのかを決めない告白になっています。ミッチェルの I don’t know about that. は「それはどうかな」と、同意を保留するときの決まった返し方です。Let’s face it. は「現実を認めよう」と、言いにくい事実を受け入れるときに添えます。
「let someone off the hook」で二人とも悪くないことにする
やがてキャメロンは、自分が火事を起こしたとミッチェルに思わされていた、と言い返します。言い合いのあと、ミッチェルが持ち出すのは、責任を外に置く説です。
Mitchell: I have a theory uh, that lets us both off the hook.
(二人とも責任を逃れられる説があるんだけど。)Cameron: I’m inclined to be on board.
(乗ってみたい気分だね。)Mitchell: Um, we both can agree that your sister can be a bit of a bully.
(えっと、君のきょうだいがちょっといじめっ子なところがあるってことには、二人とも同意できるよね。)Cameron: Yes.
(うん。)Mitchell: I’m sure growing up, the only way to get your way was to be manipulative.
(きっと子どもの頃は、思いどおりにするには人を操るしかなかったんだよ。)Cameron: It might also be said you grew up oppressed by one of history’s great monsters your sister, Claire.
(こうも言えるかもね。君は歴史上の大悪人のひとりに抑えつけられて育った。君のきょうだいの、クレアに。)Modern Family Season9 Episode2 (The Long Goodbye)
let someone off the hook は、釣り針(hook)から外してやるところから「責任や義務を免れさせる」という意味になった表現です。I’m inclined to ~ は「〜したい気がする」と、賛成を控えめに示します。can be a bit of a ~ は「ちょっと〜なところがある」と性格の指摘をやわらげる形で、It might also be said ~ も「〜とも言えるかもしれない」と主張を和らげる前置きです。互いのきょうだいの話へ移りながら、二人とも断定を避けた言い方を重ねています。
ここでの bully は「いじめっ子」、manipulative は「人を思いどおりに操ろうとする」という意味です。強い言葉を a bit of や might で包んでいるため、相手の家族を悪く言う内容でも、言い方そのものはやわらいでいます。普段の会話でも、He can be a bit stubborn.(彼はちょっと頑固なところがある。)のように、人の欠点をやわらかく伝えるときに役立ちます。
まとめ|否定しながら含みを残す英語
I’m not saying ~、it does make me wonder、There’s a small chance I definitely ~、accidentally, on purpose といった言い方を取り上げました。否定や可能性の形を借りると、疑いも告白も角を立てずに口にできます。
夫婦の言い合いを観ながら、ぼかしの型を聞き取っていくと、会話の駆け引きが見えてきます。
同じ回のほかのコラムでは、入寮の日の別れの言葉や、大学の寮の暮らしを扱っています。


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