海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
プールの中のガラスをめぐって言い合いになり、思わず言葉が強くなってしまう。そんな瞬間が、ドラマには時々あります。
そんな場面で使われている「go ballistic」を、『モダンファミリー』シーズン5第7話の中盤、ナニーのアンディとヘイリーがやり合うシーンから、一緒に見ていきましょう。
「go ballistic」の意味とニュアンス
go ballistic
意味:かっとなって激怒する、逆上する
go ballisticは、抑えていた怒りや興奮が一気に噴き出して、手がつけられなくなる状態を表す口語表現です。goは「(ある状態に)なる」という意味で、go crazyやgo nutsと同じ並びの使い方をします。
ballisticは、「弾道の」という意味の形容詞です。いったん発射されたら途中で軌道を変えられない飛び方を思い浮かべると、感情が一気に飛び出して止まらなくなる様子と結びつきます。ただし日本語の「弾道」に引きずられて訳すと意味が外れるため、「逆上する」「かっとなる」という日本語で覚えるのが近道です。
使い方の形には、He went ballistic.のように主語が激怒したことを述べる形と、go ballistic on someoneのように、怒りをぶつける相手を示す形があります。goの形は、go / goes / went / going / goneと、時制に合わせて変わります。
「怒る」という意味の基本の単語よりも、感情が爆発する勢いに重心があります。少し腹を立てた程度ではなく、抑えが利かなくなるほどの状態を指すときに向いた表現です。「ちょっとむっとした」と伝えたいときは、be annoyedのような穏やかな言い方のほうが釣り合います。
【ここがポイント!】
- 「go ballistic」の核は、抑えていた怒りが一気に噴き出して止まらなくなる状態
- 「弾道の」という直訳ではなく、「逆上する」「かっとなる」と訳すと意味が外れない
- go all ballisticのように、allを入れると勢いの強さを強調できる
『モダンファミリー』S05E07のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
プールの中のガラスを拾うよう求める言葉に、髪を理由にした断りが返ります。そのあとにアンディが放つ一言と、ヘイリーの皮肉、アンディの切り返しへと続く会話の流れに注目です。
Andy: You’re gonna have to climb in there and get all the glass out of the pool.
(そこに入って、プールの中のガラスを全部拾ってもらうよ。)Haley: Um, I just got my hair straightened, so that’s not gonna happen.
(えっと、髪をストレートにしたばっかりだから、それは無理。)Andy: I hate to go all ballistic, but it has not been a pleasure meeting you.
(かっとなりたくはないけど、君と会えてよかったとはとても言えないな。)Haley: Do you kiss your imaginary girlfriend with that mouth?
(そんな口で、その想像上の彼女とキスしてるわけ?)Andy: I do, but she’s real. So, she’s a real girl.
(してるよ。でも彼女は実在してる。ちゃんとした本物の女の子だ。)Modern Family Season5 Episode7 (A Fair to Remember)
シーン解説と心理考察
アンディが「プールの中のガラスを全部拾ってもらう」と告げると、ヘイリーは「髪をストレートにしたばかりだから無理」と、自分の事情を理由にきっぱり断ります。要求と拒否がぶつかったところで、アンディが口にするのが「かっとなりたくはないけど」という前置きです。
この前置きは、怒りを爆発させたくないという気持ちをいったん示しながら、そのあとに「君と会えてよかったとはとても言えない」と、不快感をはっきり言葉にする流れを作っています。断りを入れたうえで言い切る形が、ヘイリーへの不満の強さをやわらかく見せています。
続くヘイリーは、アンディの彼女を「想像上の」と呼び、「そんな口でキスしてるわけ?」と皮肉で返します。アンディは「してる、でも彼女は実在する」と切り返し、「ちゃんとした本物の女の子だ」と念を押します。互いに遠慮なく言い返し、相手の言葉を次の一言の材料にしていくテンポのよさが、この短いやり取りの最大の見どころです。言い返しの速さそのものが、二人の距離感を映しています。アンディの前置きと、ヘイリーの皮肉と、アンディの念押しが、一往復ごとに少しずつ温度を上げていく空気があります。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
打ち上げられたロケットを思い浮かべてみましょう。発射台を離れたあとは、途中で向きを変えられず、勢いのまま飛んでいきます。ballisticは、そんな「勢いに任せて飛んでいく」イメージを持つ単語です。go ballisticは、怒りがその軌道に乗って、止まらなくなる状態を指します。
アンディの「I hate to go all ballistic」は、その軌道に乗ってしまうのは本意ではない、という断りです。打ち上げ前に「飛ばしたくはないんだけど」と言っておきながら、そのあとの「君と会えてよかったとはとても言えない」で、思っていることはしっかり言い切っています。前置きで勢いをいったん抑え、そのうえで本音を伝える形として覚えておくと、使いどころが見えてきます。「言いたくはないけれど言う」という順番を、発射前のカウントダウンのように頭に置いておくと、I hate to ~, but …の形とセットで思い出せます。
例文で覚える「go ballistic」
怒りが爆発する場面を語るgo ballisticを、3つの例文で確かめてみましょう。
My boss is going to go ballistic when he sees this report.
(上司はこの報告書を見たら激怒するよ)
ミスを同僚に打ち明ける、ビジネスの場面です。going to go ballisticと続けると、これから起こる怒りの予想を語る形になります。
I hate to go ballistic, but this is the third time you’ve been late.
(怒りたくはないけど、遅刻はこれで3回目だよ)
友人に遅刻を注意する、日常の場面です。作中と同じ「I hate to ~, but …」の形に、3回目という具体的な事実を添えています。
A: How did your dad react?
B: He went ballistic.
(A:お父さんはどんな反応だった?)
(B:激怒したよ。)
親の反応を友人に話す会話です。過去形のwentにすると、起きた出来事として語れます。
あわせて覚えたい関連表現
go nuts / go crazy
(頭にくる、取り乱す、夢中になる)
go nutsやgo crazyは、怒りにも興奮にも幅広く使える表現です。go ballisticは、怒りや興奮が爆発して手がつけられなくなる点が、より強調されます。
blow up at someone
((人)に対して怒りを爆発させる)
blow up atは、怒りをぶつける相手をatで示す形です。go ballisticは、相手を入れずに、爆発した状態そのものを表せます。
lose one’s temper
(かっとなる、癇癪を起こす)
lose one’s temperは、感情のコントロールを失うことを一般的に表す言い方です。go ballisticのほうが、勢いの強い口語表現です。
Note|I hate to ~, but …の前置きと、go all ballisticのall
作中のI hate to go all ballistic, but …には、覚えておきたい形が2つ含まれています。
ひとつめは、I hate to + 動詞、but …という前置きの形です。hate to ~は「〜したくない」という意味で、そのあとにbutを置いて、本題に入ります。I hate to say this, but you’re late.のように、言いにくいことを切り出すときの断りとして働き、butのあとに伝えたい内容を置く構造になっています。前置きの部分は、相手への配慮やクッションのように機能し、本題の言い方をやわらげます。
ふたつめは、allの働きです。go all ballisticのallは、「すっかり」「思いきり」という強調を表します。go ballisticだけでも意味は通じますが、allを加えると、感情に任せて突き進む勢いが強まります。
作中のアンディは、前置きの中身が「かっとなる」ことそのものでした。爆発したくないと断りながら、butのあとでは不快感をはっきり述べています。断りを入れても、伝える内容は薄めていない点が、この一言の面白さです。
前置きの形と強調のallを押さえておくと、go ballisticを含む文の骨組みが見えやすくなります。
まとめ|怒りの前置きと、言い切る本音
go ballisticは、抑えていた怒りが一気に噴き出して、手がつけられなくなる状態を表す口語表現です。「弾道の」という直訳ではなく、「逆上する」「かっとなる」と訳すと意味を外しません。
上司や親の反応を語るときにも、I hate to go ballistic, but …と前置きして本題に入るときにも使えます。前置きの形と組み合わせると、言いにくいことを切り出す場面でも役立ちます。
プールのガラスをめぐるアンディとヘイリーのやり取りには、断りを入れながらも言うべきことは言い切る、遠慮のない応酬が詰まっていました。感情の勢いを伝えたくなったときの引き出しに加えてみてください。


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