海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
誰かの何気ない一言や、終わらない騒音が、じわじわと心に効いてきて参ってしまう――そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
そんな気持ちを表す「get to」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン1第12話、天才少年に打ちのめされて落ち込むシェルドンを、レナードが励ます食堂のシーンから、一緒に見ていきましょう。
「get to」の意味とニュアンス
get to (someone)
意味:〜を悩ませる/参らせる/神経に障る/こたえる
get to は本来「〜に到達する/たどり着く」という意味です。ところが目的語が人になり、get to someone の形になると、「その人を悩ませる・参らせる」という意味に変わります。
イメージは、相手の言葉や状況が、その人の感情のいちばん奥にまで「到達してしまう」こと。だからこそ、神経に障ったり、落ち込ませたり、うんざりさせたりするわけです。Don’t let it get to you.(気にするなよ)は、落ち込む相手を励ます定番フレーズです。批判や嫌がらせがこたえる場面でも、暑さや騒音がうんざりさせる場面でも使えます。基本動詞 get の意外な一面で、学習者の盲点になりやすい用法です。
【ここがポイント!】
- 「到達する」get to の行き先が「人の感情の核」になると「まいらせる」に変わる
- 人の言動にも、暑さや騒音などの状況にも使える幅広い表現
- Don’t let it get to you.(気にするな)は励ましの定番、まず形で覚えるのがコツ
『ビッグバン★セオリー』S01E12のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
15歳の天才デニスに研究を否定され、食堂ですっかり落ち込んでいるシェルドン。そんな彼を、レナードがこの表現を使って励まそうとします。
Sheldon: Dennis Kim is fifteen years old, and he’s already correcting my work.
(デニス・キムは15歳で、もう僕の研究を訂正しているんだ。)Leonard: You can’t let this kid get to you. You always knew that someday someone would come along who was younger and smarter.
(あの子のことを気にするなよ。いつか自分より若くて頭のいい奴が現れるって、ずっと分かってただろ。)The Big Bang Theory Season1 Episode12(The Jerusalem Duality)
シーン解説と心理考察
“You can’t let this kid get to you.” という一言に、落ち込む友人を支えようとするレナードの思いやりが表れています。get to you=「あの子にお前の心をかき乱させるな」という励ましが、さりげなく差し出されている場面です。
一方のシェルドンは、いつか追い抜かれること自体は想定していたと言い張ります。ただしその前提は「自分の死後、しかも相手はサイボーグのはず」という極端なもので、現実の敗北を認めまいとするプライドの強さがにじみます。レナードの素直な慰めと、それを理屈で受け止めようとするシェルドンのずれが、二人のかけ合いの味わいとして響きます。負けを認められない人物の心理が、この短い場面に表れています。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
相手の言葉や状況が、心のいちばん柔らかい「核」にまでスーッと到達してしまう様子を思い描いてみてください。get to は本来「〜に到達する」ですが、到達する先が「人の感情」になると、「神経に触る・まいらせる」へと姿を変えます。
食堂で落ち込むシェルドンに、レナードが「あいつをお前の心まで届かせるな(get to you)」と声をかける場面。あの慰めの一言を思い出せば、「心の奥に届いてかき乱す」というニュアンスがそのまま記憶に残ります。
例文で覚える「get to」
「じわじわ参らせる」というこの表現は、人にも状況にも使えます。3つの例文で使い方を見ていきましょう。
Don’t let his comments get to you.
(彼の言葉なんか気にするなよ。)
落ち込む相手を励ます場面です。劇中とまったく同じ「気にするな」の定番の形です。
The constant noise is really getting to me.
(絶え間ない騒音に本当に参ってるよ。)
環境のストレスを訴える場面です。人だけでなく、騒音のような状況も主語にできることが分かります。
A: You’ve been quiet all day. Everything okay?
B: The pressure at work is starting to get to me.
(A:今日ずっと静かだね。大丈夫?)
(B:仕事のプレッシャーがこたえ始めてるんだ。)
友人同士の会話で、心の負担を打ち明ける場面です。start to get to me で「効き始めている」という蓄積のニュアンスが出ます。
あわせて覚えたい関連表現
bother
(悩ませる/困らせる)
より一般的で軽い表現です。get to は「じわじわ効いてこたえる」という、継続的で深いところに届くニュアンスが強い点が違います。
get under one’s skin
(神経を逆なでする/イライラさせる)
「肌の下に入り込む」が由来で、苛立ち・不快に特化した表現です。get to が落ち込みや疲労も含むのに比べると、対象とする感情がやや限定的です。
wear someone down
(〜を疲れ果てさせる/消耗させる)
長い時間をかけて少しずつすり減らす意味が中心です。get to が一撃でも継続でも使えるのに対し、wear down は「徐々に」という時間の幅が前提になります。
Note|「到達する」get to が「まいらせる」になる仕組み
get to は、おそらく多くの人が最初に「〜に到達する」という意味で覚える表現です。I get to work at nine.(9時に職場に着く)のように、場所への到達を表します。それがなぜ「人を参らせる」に変わるのでしょうか。
鍵は、到達する「先」が物理的な場所ではなく、人の感情の核になることです。get to someone は、言葉や状況がその人の心の奥にまで「届いてしまう」こと。届いた結果、神経に障ったり、落ち込ませたりする――つまり「まいらせる」になります。基本動詞 get は、英語の中でもとりわけ意味の幅が広い単語で、後ろに続く語によって姿を変える柔軟さを持っています。ここで注意したいのは、同じ get to でも「get to + 動詞の原形」になると、まったく別の「〜できるようになる/〜する機会を得る」という意味になる点です(I finally got to meet her. = ようやく彼女に会えた)。後ろが「人」か「動詞」かで意味が分かれるので、区別して覚えておくと混乱しません。
この成り立ちを押さえると、Don’t let it get to you. が「それをあなたの心まで届かせるな」という、とても具体的な励ましだと分かります。「気にするな」という日本語の裏に、こんな到達のイメージが隠れているわけです。
到達する先が心の奥になると、言葉は人を揺さぶる。get の懐の深さが見えてきます。
まとめ|心の奥に届く前に、受け流す
get to は、相手の言葉や状況が感情の核にまで届いて、人を悩ませたり参らせたりすることを表す表現です。「到達する」という基本の意味から、「心に届いてかき乱す」へと自然に広がった用法です。
Don’t let it get to you. の形で覚えておけば、落ち込んでいる相手を励ます場面でそのまま使えます。人の言動にも、暑さや騒音といった状況にも使える、表現の幅の広い一言です。
何かにじわじわ参りそうなとき、心の奥に届く前に受け流す――そんな場面を思い浮かべながら、表現の引き出しに加えてみてください。


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