海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『メンタリスト』シーズン4第3話の終盤には、励ましへの軽い切り返しと、込み入った話題を打ち切る言い方が、短いやり取りの中に収まっています。皮肉の作り方と、話の終わらせ方を、台詞から拾えるうえ、日常の会話にも応用しやすい形ばかりです。短い台詞だけで完結する点も特徴です。
励ましへの返し、言い直しの形、指示語の使い分けを、三つの引用に分けて、順に確かめていきます。
「Cheer up.」と「Oh, I’m cheery.」励ましを言葉どおりに受ける返し
エピソード終盤のやり取りは、気持ちを上向かせる一言から始まります。
— Cheer up.
(元気を出して。)
— Oh, I’m cheery.
(ああ、元気だよ。)
The Mentalist Season4 Episode3 (Pretty Red Balloon)
Cheer up. は、相手に元気を出すよう促す定番の言い方です。これに対する Oh, I’m cheery. は、文字どおりには「明るくしているよ」と受ける返しです。励ましを否定せず、言葉の形だけをそのまま返しています。cheer up の cheer と cheery は同じ語の仲間で、命令された語をそのまま形容詞にして返す点が、この切り返しの工夫です。
続く発言を見ると、励ましへの返しが、希望をめぐる言い合いへと移っていきます。
— You heard her. You gave her hope.
(彼女の言葉を聞いたでしょう。あなたは彼女に希望を与えた。)
— I didn’t give her hope. I sold her hope.
(希望を与えたんじゃない。売ったんだ。)
— I think hope is worth it at any price.
(希望には、どんな代償を払っても価値があると思う。)
— What, are you running for office now?
(何だ、今度は選挙にでも出るつもり?)
The Mentalist Season4 Episode3 (Pretty Red Balloon)
You heard her. の her は、直前に話していた相手を指す語です。ここでは「彼女の言葉を聞いたでしょう」と、その発言を根拠に持ち出しています。You gave her hope. は、相手に希望を与えた、という事実の指摘です。
「I didn’t give her hope. I sold her hope.」言い直しで対比を作る
I didn’t give her hope. I sold her hope. は、hope という名詞を残したまま、動詞だけを give から sell に差し替えています。「与えた」と「売った」では、見返りの有無という意味が逆になるため、短い言葉で対比が際立ちます。形としては、I didn’t ~. I ~. と、否定のあとに同じ主語で言い直す型です。直前の発言を受けて言葉を直すときに、この形は応用が利きます。
そのあとの I think hope is worth it at any price. は、意見を述べる台詞です。worth it は「それだけの価値がある」、at any price は「どんな代償を払っても」という意味で、I think を前に置くことで、断定をやわらげています。
さらに、What, are you running for office now? が続きます。文頭の What, は驚きやあきれを示す語です。run for office は、公職の選挙に立候補することを指す言い方で、大きな主張を演説のように述べた相手に、皮肉を込めて返す形です。このように、話の大きさに見合った役柄を持ち出す皮肉は、台詞の働きとして押さえておきたい型です。誇張した立場を相手に当てはめて返すため、角を立てずに笑いへ持ち込む使い方ができる言い方でもあります。
「this conversation」と「that conversation」で話題を打ち切る
少しあとのやり取りは、リズボンとジェーンの二人の台詞です。
Lisbon: Do you really want to have this conversation? You ready for some theological talk here?
(本当にこの話をしたいの?ここで神学的な話をする覚悟はある?)
Jane: I don’t really want to have that conversation.
(その話は、あまりしたくないな。)
Lisbon: I thought you wanted to feel better and not worse.
(気分をよくしたいのであって、悪くしたいわけじゃないと思っていたわ。)
Jane: Yeah, I’m gonna recline and have a little sleep.
(ああ、背もたれを倒して、少し眠るよ。)
The Mentalist Season4 Episode3 (Pretty Red Balloon)
リズボンの Do you really want to have this conversation? は、これから始まりそうな話を続けたいのかを確かめる問いです。really が入ることで、「本当に」という念押しが加わります。続く You ready for ~? は Are you ready for ~? の頭を省いた形で、口語では Are や Do を落として問うことがよくあります。theological talk は神学的な議論を指す語で、ここでは神学的な、宗教の議論のような話、という字義どおりの意味で使われています。
ジェーンは this を that に置き換えて返します。this が手元の話題を指すのに対し、that は少し距離を置いた話題を指す語です。同じ型を使いながら指示語だけを替えると、「その話は自分の側に引き寄せない」という距離の取り方が表れます。don’t really want to ~ も、really を挟むことで強い拒否を避け、やわらかく断る形になっています。
リズボンの I thought you wanted to ~ and not ~. は、相手の望みを根拠に話を止める形です。ジェーンの I’m gonna recline and have a little sleep. は、recline(背をもたせかける)と a little sleep(少しの眠り)で、話を終わらせる宣言になっています。gonna は going to の口語形で、これから取る行動をその場で告げる言い方です。話題を直接断らず、別の行動を告げて終わらせる運び方も、ここで見て取れます。
まとめ|皮肉と指示語で話を切り上げる
励ましには言葉の形で返し、give を sell に差し替えて対比を作り、this を that に替えて話題と距離を取る。それぞれの返し方が、短い台詞に収まっています。
『メンタリスト』を観ながら、台詞の中の動詞や指示語の差し替えを探してみると、返し方の工夫が見えてきます。
同じエピソードのほかのコラムやフレーズ記事もあわせて読むと、場面全体の英語がより立体的に見えてきます。


コメント