海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『フレンズ』シーズン4第3話では、モニカが母ジュディのパーティーの料理を引き受けます。キッチンで母が口にした、娘の名前を使った言い回しが、この回の会話の軸のひとつになっていきます。
英語には、人の名前をそのまま動詞のように組み込む言い方があります。その基本の形と、同じ言い回しの意味を言い換えようとするやりとり、そして最後にもう一度使われる場面までを順に見ていきます。
「This was just in case you pulled a Monica」名前を使った言い回し
フィービーと料理を作っている最中、モニカの付け爪がひとつ、キッシュの中に入ってしまいます。それを打ち明けたところ、ジュディは冷凍のラザニアを用意していたことが分かります。そこからの会話です。
Monica: You bet that I’d screw up? So all that stuff about hiring me because I was good was–
(私がしくじる方に賭けてたの? じゃあ、腕がいいから雇ったっていう話は全部……)
Mrs. Geller: No, that was all true. This was just in case you pulled a Monica.
(いいえ、あれは全部本当よ。これはあなたが「モニカをやった」ときのための、念のためよ。)
Friends Season4 Episode3(The One with the Cuffs)
pull a +人の名前 は、「その人がいかにもやりそうなことをする」という意味で、くだけた会話で使われることがあります。動詞 pull には「(行動などを)やってのける」の意味があり、そこに人の名前を名詞のように置く形です。どんな行動を指すかは、その名前から話し手と聞き手が思い浮かべる内容しだいで決まります。
この場面では、直前にモニカが screw up(しくじる)と言い、それを受けてジュディがこの形を使っています。作中では「しくじる」に近い意味の言い方として使われていると読み取れます。
just in case は「念のため」「万一に備えて」を表します。You bet that ~? は「〜だと賭けていたの?」と問い返す形で、ここでは夫婦で賭けていたことへの驚きを表しています。
「Just change what it means」言い回しの意味を変える
場面はモニカの元の子ども部屋に移ります。今はトレーニング用の部屋になっていて、そこへフィービーがやってきます。モニカは、母が変わるかもしれないと本気で思っていた自分を「私ってバカ」と責めます。それに続くフィービーの言葉からです。
Phoebe: Look, who cares what your mom thinks? So you pulled a Monica.
(ねえ、ママがどう思おうといいじゃない。つまり「モニカをやった」ってことでしょ。)
Monica: Oh, good. I’m glad that’s catching on.
(あら、よかった。その言い方が広まってきてうれしいわ。)
Phoebe: Why does that have to be a bad thing? Just change what it means. You know, go down there and prove your mother wrong.
(どうしてそれが悪い意味じゃなきゃいけないの? 意味を変えちゃえばいいのよ。ほら、下に行って、ママが間違ってるって見せてあげなよ。)
Phoebe: You finish the job you were hired to do and we’ll call that “pulling a Monica.”
(頼まれた仕事をやり遂げたら、それを「モニカをやる」って呼ぶことにしよう。)
Friends Season4 Episode3(The One with the Cuffs)
モニカの I’m glad that’s catching on. は、言葉どおりなら「広まってきてうれしい」ですが、ここでは母に続いてフィービーまで同じ言い方を使ったことへの皮肉として返されています。catch on は「(流行や言葉が)広まる、定着する」を表す句動詞です。
フィービーの Just change what it means. は、言い回しそのものは残したまま、指す中身を入れ替えようという提案です。続く we’ll call that ~ は「それを〜と呼ぼう」と新しい呼び方を決めるときに使えます。「頼まれた仕事をやり遂げること」を、同じ名前の言い回しで呼ぶことにしようというわけです。
モニカが聞き返すと、フィービーは例を挙げて説明します。
Monica: What?
(何?)
Phoebe: Okay, um, if a kid gets straight A’s, his parents would say: “Yeah, you pulled a Monica.”
(いい? たとえば子どもがオールAを取ったら、親が「よし、モニカをやったな」って言うの。)
Friends Season4 Episode3(The One with the Cuffs)
同じ pull a +名前 でも、何を思い浮かべるかが変われば意味の向きが変わる、という仕組みをフィービーは使おうとしています。このあとモニカは、下へ行くと決め、ラザニアは出さずに自分で作ったものを出すと言います。
「you might even say that she pulled a Monica」もう一度使われる場面
場面は再びキッチンに移ります。客がラザニアに手をつけずモニカの料理を食べていると分かったあと、ジュディはモニカの料理を「とてもおいしかった」と言い、自分が間違っていた、今日は本当に感心したと伝えます。それを聞いたフィービーが口をはさみます。
Phoebe: Um, you might even say that she pulled a Monica.
(えっと、モニカは「モニカをやった」って言ってもいいくらいよね。)
Phoebe: She doesn’t know we switched it.
(あなたのママ、私たちが入れ替えたことを知らないのよ。)
Friends Season4 Episode3(The One with the Cuffs)
you might even say that ~ は「〜と言ってもいいくらいだ」と、ある言い方をあえて持ち出すときの形です。even が入ることで、「そこまで言ってもいい」という含みが加わります。
2文目は、モニカに向けて付け足された言葉です。「入れ替えた」の中身は作中で説明されていませんが、子ども部屋で話した「意味を変える」ことを指していると読むのが自然です。フィービーがここで使った pulled a Monica は、「頼まれた仕事をやり遂げた」というよい意味の側です。
人の名前を使ったこの種の言い回しは、話している人たちのあいだで何を指すかが共有されていることが前提になります。その名前の人物を知らない相手には意味が伝わりにくい可能性があるため、親しい間柄の会話で使われる言い方として覚えておくと扱いやすくなります。
まとめ|名前を使った「いつものあれ」の言い方
pull a +人の名前 で「その人がやりそうなことをする」を表す形と、just in case、Just change what it means、you might even say that ~ を見てきました。同じ言い回しが、言う人によって逆の向きで使われる流れを追えます。
モニカとフィービーのやりとりから、言葉の意味を決め直していく会話の面白さが見えてきます。
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