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『メンタリスト』シーズン5第15話には、ジェーンが二つの場面で口にする、少しひねった言い回しが出てきます。ひとつは、相手の言い分を軽くからかいながら認める言い方、もうひとつは、規則を持ち出されて不満をこぼす言い方です。
どちらも、素直に「同意する」「不満だ」と言うより、ひとことの中に前置きや強調が入っています。その組み立てを、場面の順に見ていきます。
「Normally, I’d be tempted to ~ but」前置きを置いて、同意に傾く
最初は、大きな家を前にしたやりとりです。ジェーンが、相手の考えを「迷信」と呼びつつ、今回は同意すると伝えます。
Jane: Normally, I’d be tempted to mock your superstition but in this case, I’m inclined to agree.
(普段なら君の迷信をからかいたくなるところだが、今回は同意したい気分だよ。)
— Ladies first.
(レディーファーストで。)
The Mentalist Season5 Episode15 (Red Lacquer Nail Polish)
Normally は「普段は」、I’d be tempted to ~ は I would be tempted to ~ の短縮で、「〜したくなるところだ」という意味です。mock は「からかう」です。ここで言う内容は、実際には起きていない、普段の自分の傾向として語られています。
そこへ but in this case が続きます。in this case は「今回に限っては」にあたり、普段の傾向に対する例外を示す言い方です。I’m inclined to agree の be inclined to ~ は、「〜する方向に気持ちが傾いている」という形です。きっぱり I agree. と言い切るより、同意へ傾いている程度にとどめています。
tempted は「〜したい気持ちになる」という意味の語で、実行に移す手前の「したい気持ち」を指します。そのため、be tempted to mock は「からかうところだが、実際にはやらない」という含みを持ちます。
つまりこの一文は、「本来ならからかう」という前置きを先に出し、そのうえで同意を伝える二段構えです。からかう気配を含ませながら認めるので、軽口まじりの同意として響きます。
続く Ladies first. は、先を譲るときの一言です。first は「先に」という意味で、順番を相手に回す働きをします。この一言を言った人物は、台詞からは分かりません。
「Well, we could ~」提案を、条件つきで断られる
もう一つは、ジェーンが案を出し、リズボンが条件つきで断る場面です。
Jane: Well, we could get on board and wait.
(まあ、乗り込んで待つ手もあるけどね。)
Lisbon: Not without a warrant, we’re not.
(令状がなければ、しないわよ。)
The Mentalist Season5 Episode15 (Red Lacquer Nail Polish)
Well, we could ~ は、could を使って「〜する手もある」とやんわり持ちかける形です。ここでは Well, を頭に置いて、断定せずに案を出す形になっています。get on board は「乗り込む」で、wait と合わせて「乗り込んで待つ」案です。
リズボンの返しは Not without a warrant を先に言います。without ~ は「〜なしで」で、warrant は捜索などを認める令状です。条件の部分を文頭に出すことで、何が足りないのかが真っ先に伝わります。ジェーンの案が we could と持ちかけの形だったのに対し、返しは条件を示して断る形で、二人の言い方の温度が対照的です。
末尾の we’re not は、直前の案を受けて「そうはしない」と否定を重ねる付け足しです。省かれている動作は、ジェーンの案にあった乗り込んで待つことです。Not without ~ だけでも意味は通りますが、we’re not を足すことで、きっぱりとした断りになっています。
「Rules are just so tiresome and boring」規則へのぼやき
リズボンに断られたあとの、同じやりとりの続きです。ジェーンが次のようにこぼします。
Jane: Ugh. Rules are just so.. …tiresome and boring.
(うえ。規則ってのは、本当に……面倒で退屈だな。)
The Mentalist Season5 Episode15 (Red Lacquer Nail Polish)
Ugh. は、うんざりした気持ちを表す声です。rules は「規則」、tiresome は「うんざりさせる」、boring は「退屈だ」という意味で、どちらも規則への不満を表す語です。
just so は、形容詞の前に置いて程度を強める組み合わせです。so tiresome だけでも強調になりますが、just を足すと、言い切りの勢いが増します。さらに tiresome and boring と同じ向きの語を二つ並べて、不満を重ねています。tiresome は続けるのがしんどい、boring は面白みがない、とそれぞれ少し角度の違う不満を指します。
直前に令状という規則を理由に断られているので、この一言はその流れを受けたぼやきと読めます。本気の不満なのか、冗談めかした言い方なのかは、台詞だけでは決められません。直前の令状の話を受けて、ここでは rules と一般的な言い方に広げています。
まとめ|認め方とぼやき方の組み立て
Normally, I’d be tempted to ~ but で例外を示して同意に傾き、Well, we could ~ で案を持ちかけ、Not without ~ で条件つきに断る。最後は Rules are just so tiresome and boring. と、強調を重ねてこぼします。
前置きや強調の入った台詞には、気持ちの向きが見えてきます。
このエピソードの英語は、ほかのコラムやフレーズ記事でも扱っています。


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