海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
ふと振り返って、あの一瞬だけは本気でそう思った、と話したくなった経験はありませんか。
そんな一言に使える「for a minute there」を、『フレンズ』シーズン6第20話の後半、役の熱演をほめるフィービーの場面から、一緒に見ていきましょう。
「for a minute there」の意味とニュアンス
for a minute there
意味:一瞬、ほんの少しの間(あのとき)
for a minute there は、過去のごく短い間を振り返って、「あのとき、少しの間だけ〜という気がした」と伝える口語表現です。a minute は文字どおりには「1分間」ですが、日常の会話では「ほんの短い間」という意味で使われます。
there は、場所を表す語ではなく、「その時点で」という時間の一点を指す働きをします。話し手が過去の一点に立ち戻り、そこで感じたことを思い返している感覚が、there によって添えられます。
文全体の形は、for a minute there のあとに、そのとき思ったことや、頭に浮かんだ考えを続けるのが基本です。for a minute there I thought … なら「一瞬、〜と思った」、for a minute there I was like … なら「一瞬、〜みたいな気分になった」という意味になります。作中の英文は後者の形で、I was, like, のあとに、そのとき頭に浮かんだ言葉をそのまま引用しています。
勘違いや驚き、ひやりとした出来事を後から話す場面で使う表現で、話し手の実感を、短い一言で添えられます。
【ここがポイント!】
- 「for a minute there」の核は、過去のごく短い間を、あの時点として振り返ること
- a minute は「1分間」ではなく、「ほんの短い間」の意味で使う
- あとに I thought や I was like を続けて、そのとき頭に浮かんだ考えを述べる
『フレンズ』S06E20のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ジョーイと、役の練習に付き合っていたフィービー、ロスの3人が、声に出して台詞を読み合ったあとの感想を言い合っています。ロスは大きな声で台詞を読んでいたらしく、ジョーイが声を落とすよう声をかけ、ロスが役の設定を持ち出して返します。そこへフィービーが、ロスの演技をほめます。
Joey: Ross, you don’t have to yell.
(ロス、そんなに叫ばなくていいんだぞ。)Ross: There was just an explosion, okay? My hearing would be impaired.
(ついさっき爆発があったんだぞ? 耳がやられてるはずだろ。)Phoebe: I thought you were excellent. In fact, for a minute there I was, like, “Ooh, where’d Ross go?”
(あなた、すばらしかったわよ。実際、一瞬、「あら、ロスはどこに行ったの?」って思ったもの。)Ross: And I have to say, that first scene where you meet Mac…
(それに、これだけは言わせてくれ。マックと出会う最初の場面が……)Friends Season6 Episode20(The One with Mac and C.H.E.E.S.E.)
シーン解説と心理考察
ジョーイの「Ross, you don’t have to yell.」は、「叫ぶ必要はない」という声かけです。ロスの声が大きかったことが、この一言から分かります。
ロスの返事「There was just an explosion, okay? My hearing would be impaired.」は、声の大きさを、役の状況のせいにする理屈です。just は「ついさっき」、explosion は「爆発」で、爆発の直後なら、耳が聞こえにくくなっているはずだ、という筋道を立てています。would be impaired の would は、「〜のはずだ」という推量を表します。okay? は、納得してもらうための念押しです。ロスは役に入り込んだまま、役の状況を盾にして、自分の声の大きさを正当化しています。
ここへフィービーの「I thought you were excellent.」が入ります。excellent は「すばらしい」という意味で、ほめ言葉です。続く「In fact」は、「それどころか」と、ほめ言葉を一段強める前置きで、「for a minute there I was, like, “Ooh, where’d Ross go?”」につながります。where’d は where did の短縮形で、「ロスはどこへ行ったの?」という意味です。目の前にいるロスに向かって、ロスがいなくなったように見えたと言っているので、役に入り込んで別人のように見えた、という最大級のほめ方になります。for a minute there が、「ほんの一瞬だけ、そう見えた」という実感を、短く添えています。
I was, like, は、そのとき頭に浮かんだ言葉を、引用する口語の言い方です。「みたいな感じだった」という意味で、like のあとに、その場の心の声がそのまま続きます。「Ooh」という感嘆の声を添えることで、驚きの表情まで想像できる形になっています。
ロスの「And I have to say, that first scene where you meet Mac…」は、ほめ返そうとする流れの言葉で、have to say は「言わずにはいられない」という意味です。感想は途中で途切れています。そのあとにジョーイが「今日はここまでにしよう」と切り上げ、フィービーが、自分たちが足を引っ張られているとこぼし、ロスが同意します。役に入り込んで盛り上がる二人と、それを止めるジョーイという対比が、この場面の見どころです。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
時計の針が、ほんの少しだけ動く間を思い浮かべてみましょう。そのわずかな時間に、過去の一点へ立ち戻る。a minute が短い時間を示し、there が「あの時点」を指して、「あのとき、ほんの少しの間」という絵ができあがります。
フィービーの「for a minute there I was, like, “Ooh, where’d Ross go?”」も、ロスの熱演を見ている間の、ほんの一瞬だけの錯覚を、あとから振り返った言い方でした。目の前にいるはずのロスが消えたように見えた、その短い間だけを切り取って伝えています。
覚えるときは、「一瞬 + あのとき + そのとき考えたこと」の3つを、頭の中で並べておきましょう。for a minute there のあとに、I thought や I was like を続ける形が、自然に口から出てきます。
例文で覚える「for a minute there」
ひやりとした場面でも、勘違いの場面でも、この表現は同じ形で使えます。3つの例文で確認していきましょう。
For a minute there, I thought we’d miss the train.
(一瞬、電車に乗り遅れるかと思った。)
ひやりとした出来事を、後から振り返る場面です。I thought のあとに、そのとき頭に浮かんだ考えが続いています。
A: You looked worried.
B: For a minute there, I thought I lost my keys.
(A:心配そうな顔をしてたね。)
(B:一瞬、鍵をなくしたかと思ったんだ。)
表情の理由を説明する会話です。過去の短い間に感じたことを、あとから明かす形になっています。
For a minute there, I was like, “Is this really happening?”
(一瞬、「これって本当に起きてるの?」って思った。)
作中の英文と同じ、I was like のあとに引用を続ける形です。驚きや戸惑いを、そのときの心の声として再現できます。
あわせて覚えたい関連表現
for a moment
(少しの間)
時間の短さを表す言い方です。for a minute there が「あの時点で」と振り返るニュアンスを持つのに対し、for a moment は、短い間という中身だけを述べます。
for a second
(一瞬)
さらに短い時間の単位で言う言い方です。for a minute there より、瞬間的な短さが前に出ます。
just now
(たった今)
直前の出来事を指す言い方です。for a minute there は、少し前の短い間を振り返って述べる点が違います。
Note|for a minute there のあとには、そのとき頭に浮かんだ考えを続ける
for a minute there は、それ単独では意味が完結せず、あとに、そのとき思ったことや感じたことを続けて使います。続け方には、大きく2つの形があります。
ひとつめは、I thought … の形です。for a minute there I thought we’d miss the train. なら、「一瞬、電車に乗り遅れると思った」という意味になります。そのときの考えを、事実として述べる言い方で、過去の短い間の勘違いや、ひやりとした感覚を、冷静に伝えられます。
ふたつめは、作中のフィービーの言葉のような I was like … の形です。like のあとに、そのときの心の声を、引用の形でそのまま続けます。「一瞬、こう思った」という実感を、生き生きと再現できる点が、この形の強みです。
どちらの形でも、for a minute there は、文頭に置いても、文中に挟んでも使えます。I thought I’d lost my keys for a minute there. のように、文末に置く形もあります。位置が変わっても、「あのときの短い間」を指す働きは同じです。
フィービーの言葉は、I was like の形で、「Ooh, where’d Ross go?」という心の声を、そのまま再現していました。心の声の再現が、ロスの熱演のすごさを、ほめ言葉として伝える働きをしています。
同じ「一瞬」でも、続け方で、伝わる雰囲気が変わります。
まとめ|あの一瞬の実感を、短く添える
for a minute there は、過去のごく短い間を振り返って、「あのとき、少しの間だけ〜という気がした」と伝える口語表現です。a minute は「ほんの短い間」、there は「その時点で」を表し、あとに I thought や I was like を続けて、そのとき頭に浮かんだ考えを述べます。
for a moment や for a second と同じく短い間を表しますが、for a minute there は、あの時点を振り返る感覚が加わる点が特徴です。just now は直前の出来事を指すので、少し前の短い間を述べる for a minute there とは、時間の位置が違います。
役に入り込んだロスの熱演を、一瞬だけロスがいなくなったように見えたとほめるフィービーの様子には、短い間の実感で、相手のすごさを伝えるおもしろさが表れていました。あの一瞬の気持ちを誰かに話す場面を思い浮かべながら、表現の引き出しに加えてみてください。


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